研究課題
二倍体細胞株(HT29-MTX-E12、Detroit562)からP2X4とPiezo1を完全に欠失させた細胞株を樹立することは出来なかった。ヒトのDetroit562とHT29-MTX-E12細胞株におけるメカノストレス受容体の遺伝子発現を比較したところ、TRPV4、PANX1、P2X4、P2Y2の発現はいずれも観察されるものの、Detroit562では主にTRPV4の、HT29-MTX-E12ではP2X4の発現が優位であり、消化管の部位によりセンシング機構の違いが示唆された。そこで、一倍体細胞HAP1を用いてTRPV4とPannexin1受容体の欠損株を作製した。MALDI型質量分析法を用いたイメージング質量分析の対象分子には、リン脂質・アミノ酸・ペプチド・タンパク質・ヌクレオチド等がある。池川らは、従来、報告例の乏しかった胆汁酸をはじめとするマウス全個体レベルにおける食品の消化吸収に関わる生体側の情報と食品由来物質の消化プロセスを同時に可視化することに成功した。食物応答レポーターマウス作製を試みた。腸管上皮細胞特異的Cre発現マウスとCre依存的な蛍光タンパク質カルシウムプローブGCaMP6f発現マウス(B6-Gt(Rosa)26Sor<tm1(CAG-GCaMP6,-mCherry)Shi>)とを交配させることを試みた。まず、腸管にてカルシウムセンサーを発現させるためのCreドライバーマウスとしてVillin-Creマウス(C57BL/6N-Tg(Vil1-cre)2Utr/Rbrc)を検討したが、本マウスは全身の臓器でCreが発現し、本目的には適さないことが判明した。一方、遺伝子改変マウスを用いる手法ではマウスの交配・繁殖に多大な時間と労力を要するため、ウイルスベクターを用いる手法の検討を行った。その結果、アデノ随伴ウイルスが有用であることが判明した。
3: やや遅れている
イメージング質量分析においては、胆汁酸を指標に解析することに成功し、食物脂質の消化吸収挙動の解析を可能にした点は評価できる。一方で、CRISPR/Cas9法を用いて、一倍体細胞HAP1においては受容体欠損株を樹立できたが、ヒト腸上皮由来の二倍体細胞株では成功しておらず、再度試行する必要がある。また、一方で、食物応答レポーターマウスが作製できていない点はやや遅れている。
一倍体細胞HAP1を用いて、P2X4、PIEZO1、TRPV4、PANX1受容体の欠損株を作製できたことからCRISPR/Cas9法の操作に問題はないと考えている。そこで、gRNAの設計もより最適化を目指しつつも、腸上皮細胞由来の二倍体細胞株においてCRISPR/Cas9操作を2回繰り返すことにより各受容体が欠損した細胞株の樹立を試みる。各受容体の拮抗薬共存下やsiRNA法とも組合せて、Detroit562およびHT29-MTX細胞株のずり応力負荷に伴う細胞応答をカルシウムイメージングにより測定し、メカノストレスに対する受容体の作用機序を解析する。ナノファイバー存在下での消化管内における食物脂質の消化プロセスにかかわる胆汁酸の挙動についてイメージング質量分析法を用いて解析する予定である。また、新生児マウスは、離乳まで母親由来の母乳のみにより成長する。母乳中には、栄養素をはじめ初期免疫に関わるイムノグロブリンが含まれ、新生児を対象としたイメージング質量分析法により個体の腸管免疫の成長、腸内細菌との相互作用による腸内環境の可視化が期待できる。食物応答レポーターマウスの作製においては、腸管にてカルシウムセンサーを発現させるために適したCre発現マウスを探すとともに、アデノ随伴ウイルスを用いたカルシウムセンサー発現手法を検討する。
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