研究課題/領域番号 |
20H02937
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山地 亮一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00244666)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メトキシフラボン / GPR97 / 骨格筋 / 筋肥大 |
研究実績の概要 |
量的・質的に向上する骨格筋の形成を目指すため、本研究では5-ヒドロキシ-7-メトキシ(5H7M)フラボン摂取で筋肥大が起こる分子機構におけるadhesion型GPCR(aGPCR)の役割を明確にすることを目的とした。これまでに5H7Mフラボンは筋管細胞を肥大させるが、5,7-ジヒドロキシ(57DM)フラボンは筋管細胞のサイズに影響を与えないことを見出している。5H7Mフラボンと57DMフラボンがGPR56またはGPR97を介したCRE、SRE、SRFの転写活性に及ぼす影響を検討したところ、5H7MフラボンがGPR97を介したSRF 転写活性を特異的に活性化した。そこで5H7Mフラボンによる筋管肥大作用の標的タンパク質としてGPR97に注目し、GPR97に作用する5H7Mフラボンの構造-活性相関を評価したところ、5H7Mフラボンの5位のヒドロキシ基と7位のメトキシ基の両方がGPR97を介したSRF 転写活性に必要であった。いくつかのaGPCRはN末端領域が切断されることによって活性化されるが、切断が起こらない変異体GPR97に対しても5H7MフラボンはSRF転写活性を活性化したので、活性化にN末端領域の切断は必須でないことが明らかになった。GPR97を高発現させた筋管細胞は肥大し、5H7Mフラボン刺激によってさらに肥大化した。一方、GPR97をノックダウンした筋管細胞では筋萎縮が起こり、5H7Mフラボン刺激による筋肥大効果が阻害された。さらにGPR97を高発現させた筋管細胞は5H7Mフラボンで刺激すると細胞膜のGPR97レベルが増加することを見出した。現在、GPR97の役割をin vivoで評価するために、アデノ随伴ウィルス(AAV)法を利用したGPR97の発現ベクターの作製が終わった段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度中にAAV発現ベクターを利用してマウスの下肢の骨格筋でGPR97を発現させる予定であった点は遅れている。しかし5H7Mフラボン刺激によってGPR97レベルが増加するという大きな発見をした。この発見は5H7MフラボンによるGPR97を介したSRF転写活性の活性化機構の解明に重要な情報となると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
動物レベルでGPR97の骨格筋における役割を評価するため、AAV法を利用して下肢の骨格筋でGPR97を高発現させたマウスとノックダウンさせたマウスを作製する。作製後は、筋線維のサイズおよび特徴をそれぞれ組織学的および生化学的に解析する。さらにトレッドミルで1ヶ月間の強制走行運動(連続した過負荷運動)させたマウスの骨格筋ではGPR56とGPR97の発現が約3倍上昇することを見出したので、運動と5H7Mフラボンの併用効果を評価する。まずどのような運動(連続または単発の過負荷運動、あるいは自発運動)がGPR56とGPR97の発現に影響するのかを評価する。発現がより増加する運動タイプを負荷したマウスに5H7Mフラボンを摂取させることで、筋量や筋線維タイプを測定する。現在、筋管細胞を電気刺激で収縮させることによって、運動で発現が変動する遺伝子を解析しながら運動による骨格筋の収縮を模倣したin vitroモデルを構築中である。このモデルにおいて、GPR56とGPR97の発現におよぼす影響と5H7Mフラボンによる筋肥大効果を評価する。さらに33種類のaGPCRのうち骨格筋で発現しているaGPCRを選抜したので、aGPCRをコードするcDNAを獲得し、5H7Mフラボンをリガンドとして機能するaGPCRを探索する。
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