研究課題
短鎖脂肪酸(SCFA)は、難消化性食物繊維が腸内細菌の代謝・分解を受ける際に産生される酪酸などの鎖長の短い脂肪酸である。腸管はもとより全身の様々な臓器において細胞機能を調節し、がん疾患や代謝性疾患、免疫関連疾患の病態を緩和するといった宿主の健康維持に有益な作用を発揮する。本課題では、アレルギー反応のエフェクター細胞であるマスト細胞のIgE依存的な活性化をSCFAが抑制する機構について、in vivo、in vitroで詳細に解析している。阻害剤やsiRNA、遺伝子改変マウスを組み合わせた解析により、SCFAの受容体として機能するGタンパク質共役型受容体(GPCR)の特定、エピジェネティック制御の寄与、抗酸化ストレス応答やプロスタノイド合成の誘導が及ぼす影響などについて解析を進めている。当該年度は、GPCRであるGPR109AやEP3がSCFAによる生体アレルギー反応の緩和に寄与することを特異的なアゴニストやアンタゴニストを用いて明らかにした。多価不飽和脂肪酸(PUFA)も腸内細菌の代謝を経て変換され、宿主の健康に貢献する新たな生理活性を獲得する。本課題では、PUFA代謝産物群の中から単球系細胞による炎症反応を抑制する作用が最も強い化合物としてγKetoCを選抜し、その作用機序の解明に取り組むと共に、炎症性疾患や自己免疫疾患への効果を、マウスモデルを用いて検証している。また、PUFA代謝産物の一つであるKetoAが、疲弊T細胞のミトコンドリア機能を回復させる可能性を見出しており、疲弊回復に至る分子機構のin vitro解析とマウス担がんモデルを用いたin vivo解析を行なっている。これらPUFA関連の研究課題において、本年度は、抗酸化ストレス応答マスター転写因子NRF2欠損マウスを用いた解析により、γKetoC経口摂取による炎症性腸疾患改善にNRF2が寄与することを示唆する結果を得た。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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