研究課題/領域番号 |
20H02942
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
下村 吉治 中部大学, 応用生物学部, 教授 (30162738)
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研究分担者 |
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 教授 (90281568)
北浦 靖之 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90442954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋タンパク質代謝 / ビタミンD / BCAA / ビタミンD欠乏食 / マウス |
研究実績の概要 |
カルシウム代謝を調節するビタミンD(VD)は、骨格筋のタンパク質代謝に影響することが示唆されているが、その作用のメカニズムについては不明である。一方、分岐鎖アミノ酸(BCAA)はタンパク質合成の主要アミノ酸であると共に、タンパク質代謝を調節するアミノ酸としても知られているので、本研究ではBCAA代謝に対するVDの作用について検討する。そこで、まずVD不足マウスを調製してその動物の血漿BCAA濃度およびBCAA代謝系酵素の活性状態を解析した。BCAA代謝系は、その分解の第2ステップの酵素BCKDH複合体により調節されるので、その酵素活性を解析した。VD不足マウスの調製は、ラットにおいて筋萎縮が確認されている方法に準じて、4週齢の雄性C57BL/6マウスに、標準精製食AIN-93GのVDを除去したVD欠乏食を与えて、11週間または17週間飼育した。それぞれの実験期間の最終日にマウスを屠殺して、血漿、下肢骨格筋および肝臓を採取した。骨格筋(腓腹筋+足底筋+ヒラメ筋)の重量は、いずれの飼育期間においてもVD欠乏による影響を受けなかった。肝臓のBCKDH複合体活性および血漿BCAA濃度についてもVD欠乏による有意な影響は認められなかった。 本研究と関連するBCAA代謝の調節に関する研究において、前脳部特異的にBCAA代謝を亢進させたマウス(BDK-Emx1-KOマウス)において、低タンパク質食(5%タンパク質食)を摂取させると脳神経機能異常が認められること、およびこのマウスでは走運動トレーニング後の走運動持久力が有意に上昇することが観察された。さらに、BCAA代謝調節の基礎的な研究において、高血圧症薬であるvalsartanはBCKDHキナーゼ(BCKDH不活性化酵素)の特異的阻害剤であり、valsartanをラットに投与するとBCAA代謝が促進されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、本研究では、まずマウスを用いて研究に着手した。すなわち、VD不足マウスを調製してその動物の血漿BCAA濃度、およびBCAA代謝系酵素の活性状態を解析した。しかしながら、骨格筋(腓腹筋+足底筋+ヒラメ筋)の重量は、いずれの飼育期間においてもVD欠乏による影響を受けなかった。肝臓のBCKDH複合体活性および血漿BCAA濃度についてもVD欠乏による有意な影響は認められなかった。ただし、血中25(OH)VD3濃度はVD欠乏食摂取により一部減少した。よって、マウスの骨格筋およびBCAA代謝はVD欠乏による影響は受けにくいと判断された。この原因として、ラットに比べてマウスは身体運動活性が高いため、骨格筋の萎縮を起こしにくい可能性が推察される。よって、骨格筋に対するVD欠乏の影響を検討するには、マウスは適してないモデル動物と考えられる。これらの理由のため、初年度の研究の進捗状況はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
モデル実験動物をラットに切り替えて、同様の研究に着手する。マウスに比べてラットでは、食餌摂取量が約10倍であるため実験の費用は増大するが、下肢の骨格筋(腓腹筋+足底筋+ヒラメ筋)が大きいため正確に採取が可能であり、血液も分析を繰り返して実施できる量を採取可能である。 さらに、ラットを用いて、BCAA代謝を亢進し同時に骨格筋を萎縮させるデキサメサゾン(合成グルココルチコイド)投与ラットにおける筋タンパク質とBCAA代謝に対するVDの欠乏または過剰投与の影響を検討する。
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