研究課題/領域番号 |
20H02942
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
下村 吉治 中部大学, 応用生物学部, 教授 (30162738)
|
研究分担者 |
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 教授 (90281568)
北浦 靖之 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90442954)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 筋萎縮 / ビタミンD / グルココルチコイド / ラット |
研究実績の概要 |
本研究では、ラット骨格筋に対するビタミンD (VD)の生理機能について検討した。本年度の研究では、すでに報告されているVD不足の飼育条件におけるラット後肢筋萎縮を確認することとした。5週齢SD系雄性ラットにVD欠乏食(AIN93Gを基本組成としたVD無添加食)を18週間自由摂取させ、後肢筋重要に対する影響を観察した。ラットは、SPF環境で個別飼育ケージにおいて飼育された。実験期間終了後に腓腹筋+足底筋(G+P)と前脛骨筋(AT)の重量を測定したところ、予想に反してVD不足によるそれらの筋萎縮は観察されなかった。よって、微妙な実験条件の違いによりVD不足の影響は左右される可能性が考えられた。次の実験では、確実に筋萎縮の発生する条件を用いるため、デキサメタゾン(DEX)投与による筋萎縮法を採用した。最初の実験(1)では、AIN93Gを摂取する9週齢SD系雄性ラットに、salineまたはDEX(0.6 mg/kg体重)を1日1回、5日間連続投与した。最終投与日のDEX投与6時間後に、イソフルランで麻酔下で後肢筋を採取した。次の実験(2)では、5週齢の雄性ラットにAIN93G食またはVD欠乏食を与え8週間飼育後、各群をさらにsalineまたはDEXを投与するサブグループに分け、実験(1)と同様に処理した。実験(1)では、DEX投与によりAT重量は29%低下、G+P重量は23%低下した。一方、ヒラメ筋の筋萎縮は認められなかった。実験2では、DEX投与によりAT重量はAIN93G食群で18%低下、VD欠乏食群で20%低下、G+P重量はControl食群で17%低下、VD欠乏食群で16%低下した。しかし、ヒラメ筋では筋萎縮は認められなかった。これらの結果より、DEX投与による白筋を含む骨格筋の萎縮は若齢ラットで顕著であったが、DEX投与による筋萎縮にVD欠乏食の影響は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
VDは骨格筋タンパク質代謝に影響することが報告されているが、若齢雄性ラットの骨格筋に対するVD不足の影響は出にくいことが判明した。また、すでに報告されているVD欠乏食による筋萎縮も、微妙な実験条件の違いにより再現性が低いことより、筋萎縮を確実に誘発する実験条件において研究する重要性が明らかとなった。よって、研究の進捗状況はやや遅れ気味である。そこで、DEX投与による筋萎縮ではわずか5日間の連続投与により20%前後の筋萎縮が白筋を含む骨格筋に認められたので、有用な方法であると判断された。さらに、この筋萎縮は赤筋(ヒラメ筋)には認められなかったため、DEX効果を確認する対照となると考えられる。今後は、DEX投与により筋萎縮がより誘発されやすい条件においてVDの生理機能を検討する必要があると考えられる。現在のところ、筋萎縮を効率的に誘発する実験条件を見出す段階で研究が進捗しているが、DEX投与による筋萎縮は確実となり、さらにラット用精製食(20%(w/w)カゼイン食:タンパク質含量17.2%)を用いた本研究では、これまでに報告されている市販食(22.5%タンパク質食)を用いた研究よりも筋萎縮率が上昇する可能性があるので、今後もこの実験法を改変して研究を継続する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
DEX投与による筋萎縮はラットの若齢期で顕著であり、さらに摂取させる飼料のタンパク質含量の減少によって筋萎縮率が促進される可能性がある。すなわち、ラット飼料(特にタンパク質含量)によりDEXの作用は影響されると推察されるので、今後は低(8%)タンパク質食を用いてDEX投与による筋萎縮を検討する。さらに、腸内細菌叢の変化がサルコペニアに影響することがヒトにおいて報告されたので、プレバイオティクスによる腸内細菌叢の改善がDEX誘発筋萎縮に影響する可能性、およびそれらに対するVD不足の影響についても検討する。
|