研究課題/領域番号 |
20H02943
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
柴田 克己 甲南女子大学, 医療栄養学部, 教授 (40131479)
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研究分担者 |
寺尾 純二 甲南女子大学, 医療栄養学部, 教授 (60093275)
川畑 球一 甲南女子大学, 医療栄養学部, 准教授 (60452645)
吉岡 泰淳 甲南女子大学, 医療栄養学部, 助教 (80801513)
伊美 友紀子 甲南女子大学, 医療栄養学部, 助手 (60823979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低栄養 / 筋萎縮 / 非栄養食品因子 / メチルキサンチン / NAD+測定系 / 総説 |
研究実績の概要 |
NAD+はミトコンドリアにおけるエネルギー産生に重要な補酵素であり、これを安定的に供給する食事成分の探索が本年度における研究計画の一つであった。そこで、食事成分が体内NAD+代謝に及ぼす影響を検討するため、ラット血漿および骨格筋を用いてNAD+測定系を立ち上げた。また、通常飼育において骨格筋重量と骨格筋NAD+量は正の相関を示す傾向がみられた。 低栄養になると肝臓での糖新生が亢進し、血中グルココルチコイドの濃度が上昇する。グルココルチコイドは、骨格筋において、ユビキチンリガーゼの発現上昇を介してタンパク質の分解を亢進させる。本年度は、合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンの処理により誘導される筋萎縮を抑制する非栄養食品因子を探索し、メチルキサンチンを見出した。メチルキサンチンは、デキサメタゾンの誘導するユビキチンリガーゼの発現を抑制した。また、メチルキサンチンは、グルココルチコイド受容体との結合が観察されたことから、デキサメタゾンとグルココルチコイド受容体との結合を競合的に阻害することで、筋萎縮を抑制している可能性が示唆された。 2020年3月頃より始まったコロナ禍により、本学での研究も9月ごろまで全く実施することができなかった。また、大学でのオンライン授業への対応も混乱が続き、研究に時間を当てることが困難であった。そのため、研究実施に必要な機器の準備や実験室の整備は完了したが、研究計画が大きく遅れることとなった。一方、登学自粛の状況を有効活用するため、研究計画に関連する論文を精査し、大学紀要にその総説を投稿することで本研究計画の方向性や研究内容、手法について情報共有や再確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月頃より始まったコロナ禍により、本学での研究も9月ごろまで全く実施することができなかった。また、大学でのオンライン授業への対応も混乱が続き、研究に時間を当てることが困難であった。そのため、2020年度は研究の準備こそ整ったものの、研究計画が大きく遅れることとなった。組織中のNAD+量を測定する方法を習得し、骨格筋の重量とNAD+量に正の相関があることを見出したが、予定されていたNAD+量を増加させる食事成分の探索は実施できなかった。また、フレイル予防の根幹の一つである筋萎縮に対して抑制効果のある非栄養食品因子の候補としてメチルキサンチンを見出したが、予定されていた実験動物を用いた検証を行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、コロナ渦の影響で研究計画が大幅に変更された。次年度から潤滑に研究を遂行するため、本研究課題に関連する学術論文を精査し、総説を4報投稿した。そして、今年度に計画されていた内容について早急に取り組む。まず初めに、筋萎縮を抑制する非栄養食品因子として同定されたメチルキサンチンについて、実験動物を用いて有効性・安全性を検証する。また、エネルギー代謝の亢進およびミトコンドリアの機能不全の改善に寄与する非栄養食品因子の作用機序の解明をする。さらに、ラットにおいてNAD+量を増加させる微量栄養素および非栄養食品因子(メチルキサンチン含む)の探索に取り組む。
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