研究課題
中性子準弾性散乱を用いて、糊化した澱粉の老化に伴う分子ダイナミクスの変化を調べた結果、老化現象に伴い分子ダイナミクスが空間的に抑制されることを示した。また結晶相と非晶質相に対応した2値分布のモデルを用いて解析したところ、老化により分子運動性の低い非晶質相の割合が増加することが示された。これら成果は、中性子準弾性散乱によって老化に伴う分子ダイナミクスの変化を捉えた初めての成果である。老化は澱粉の水和状態とも関係するため、現在、水和状態の違いと老化速度との関係性などを調べている。またタンパク質などの生体分子の水和状態と水分活性との関係性を調べるため、様々な水分活性(aw) 条件下における凍結乾燥細菌の動力学転移に及ぼすグリセロールおよびグルコースの影響を中性子準弾性散乱で調べた。水分収着等温線から、各aw における含水率は、グリセロール、グルコース、無添加試料の順に高くなることがわかった。試料中の原子の平均二乗変位(MSD) に対する温度の影響を調べたところ、MSD は温度の上昇に伴い徐々に増加し、データフィッティングから、3 つの動力学転移温度が決定され、モデル解析により添加された溶質とバクテリアは完全には混和しないことが示唆された。さらに、分子間相互作用がタンパク質の物性に及ぼす影響について調べ、タンパク質の力学強度に対するジスルフィド結合の重要性が確認され、疎水性および静電的相互作用が、タンパク質の物性を制御する重要な役割を果たしていることが示された。中性子小角散乱(SANS)は、ソフトマターの高次構造を研究するための強力な手法として広く利用されているが、ナノメートルスケールの食品のミクロ構造を調べる重要な計測手法である。FTIR分光法の減衰全反射サンプリング法を採用した新しい同時測定システムを開発した。またゲルのナノ構造や糖溶液の水和状態を中性子小角散乱で解析した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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