研究課題/領域番号 |
20H02947
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大徳 浩照 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 講師 (30361314)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒスチジンメチル化 / タンパク質メチル化 / METTL9 |
研究実績の概要 |
本研究では、分析対象のタンパク質を酸加水分解後にLC-MS/MS解析するという独自のメチル化修飾検出法とRNAiスクリーニングを組み合わせることで、世界で初めて同定したヒスチジン残基のπメチル化を触媒する酵素METTL9について、3つの観点から解析を行っている。 一つ目は、METTL9の酵素活性を制御する分子メカニズムの解明である。METTL9自身のメチル化が酵素活性に与える影響を検証するため、MALDI-TOF/MSで決定したメチル化部位をフェニルアラニンに置換し、HF変異体タンパク質を精製して基質であるS100A9に対するメチル化活性を評価した。しかしながら、これまでのところ顕著なメチル化活性の変化は見られていない。一方で、METTL9の新規の翻訳後修飾を見出しており、現在、これらによるメチル化活性への影響を調べている。 二つ目は、S100A9のヒスチジンメチル化が分子機能に与える影響の解明である。S100A9のヒスチジンメチル化部位はC末端側の亜鉛結合モチーフ内に存在したため、このメチル化が亜鉛結合活性に与える影響を検討した。合成ペプチドを用いたin vitro亜鉛結合実験の結果、S100A9のヒスチジンメチル化は亜鉛結合を阻害することが明らかになった。 三つ目は、線虫を用いたMETTL9の生物学的意義の解明である。線虫のmettl9遺伝子のオルソログと考えられるmetl-9の欠失変異体を2系統入手し、表現型の解析を行っているが、これまでに野生型とのはっきりとした差異は見いだせていない。現在、生化学的手法によるヒスチジンメチル化酵素活性の検証も並行して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.METTL9自身のメチル化が酵素活性に与える影響を検証するため、MALDI-TOF/MSによるメチル化部位の同定を行った。1箇所のメチル化部位は早期に決定できたが、他のヒスチジン残基のメチル化の可能性を否定できなかったため、ペプチド消化に用いるプロテアーゼの検討を行い、最終的に2箇所のメチル化部位を同定した。決定したメチル化部位をフェニルアラニンに置換し、HF変異体タンパク質を精製して基質であるS100A9に対するメチル化活性を評価したが、これまでのところ顕著なメチル化活性の変化は見られていない。一方で、METTL9の新規の翻訳後修飾を見出しており、現在、これらによるメチル化活性への影響も調べている。
2.S100A9のヒスチジンメチル化部位はC末端側の亜鉛結合モチーフ内に存在したため、このメチル化が亜鉛結合活性に与える影響を検討した。合成ペプチドを用いたin vitro亜鉛結合実験の結果、S100A9のヒスチジンメチル化は亜鉛結合を阻害することが明らかになった。
3.線虫のmettl9遺伝子のオルソログと考えられるmetl-9の欠失変異体を2系統入手し、表現型の解析を行っているが、これまでに野生型とのはっきりとした差異は見いだせていない。現在、生化学的手法によるヒスチジンメチル化酵素活性の検証も並行して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.METTL9の2箇所のメチル化部位をフェニルアラニンに置換したHF変異体タンパク質について、完全にメチル化が消失していることをLC-MS/MSで検証する。その上で酵素活性に影響が認められなかった場合、これを結論とする。一方で、解析過程で見出した他の翻訳後修飾について、METTL9の酵素活性に与える影響を検討していく。
2.S100A9のヒスチジンメチル化が分子機能に与える影響に関しては、一定の結論が得られたと考えている。今後の計画としては、S100A9が好中球で豊富に発現していることから、自然免疫・炎症反応におけるS100A9の機能において、ヒスチジンメチル化による亜鉛結合阻害ががどのような役割を持つか考察を加え、次の研究計画につなげたい。
3.線虫のmetl-9の欠失変異体について、通常飼育下では野生型と大きな表現型の違いが認められなかったため、各種ストレス下での表現型の比較を行う。またMETTL9の基質として同定したS100A9は線虫には保存されていないため、線虫における基質を新たに同定し、表現型解析の手掛かりにする。
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