研究課題
害虫に加害された植物から放出された植物の香り(VOC)には自身の未被害部位や周囲の未被害植物の病害虫耐性を高めることができる。しかし、植物が如何に大気中のVOCを受容し、細胞レベルで防御遺伝子等の活性化に繋げるかの作用機序は未だ解明されていない。そこで本研究では、VOCが結合する植物の生体膜受容体および細胞内因子を特定し、植物のVOC受容の分子システムを明らかにすることを目指した。本研究では、ミントの主要香気成分であるメントールのヒドロキシ基にバリンを縮合させたメントール誘導体(ment-Val)と相互作用するシロイヌナズナの受容体キナーゼ(RLK)をAlphaScreenを用いてスクリーニングした。その結果、Abnormal leaf shape 2 (ALE2) 等の受容体候補が同定された。一方で、ファージディスプレー次世代シークエンス解析から同定されたment-Valと相互作用するペプチド配列をもつタンパク質候補のment-Val結合実験を実施したが、ment-Valと有意に結合するタンパク質の同定には至らなかった。現在、ment-Valと相互作用するRLK候補の過剰発現株およびT-DNA挿入変異株を用いた解析を進めている。さらに本研究では、オシメンに曝されたシロイヌナズナにおける解析結果から、オシメンに曝された植物ではERF8とERF104などがヒストンアセチル化および転写が亢進されることで、5日間程度防御応答を記憶できることが示唆された。また、シロイヌナズナHAT変異株8系統にオシメンを曝した結果、HAC1/5とHAM1変異株においてERFの発現抑制ならびにアセチル化の低下が認められた。故に、オシメンに曝されたシロイヌナズナでは、HAC1/5およびHAM1を介してERFが活性化され、5日間活性化状態を維持(記憶)できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
受容体候補が同定され、実験計画に沿って研究は推進されているため。
4種のment-Val相互作用RLKの過剰発現株(T2以上)とT-DNA挿入変異株におけるメントールやオシメンに対する感受性をマーカー遺伝子(PDF1.2等)の発現誘導を評価する。また、これらのVOCに曝された株の細胞内カルシウムおよび膜電位の定量分析を研究協力者であるMaffei教授(トリノ大学)と実施する予定である。また、等温滴定カロリメトリー(ITC)を用いた受容体候補とテルペンリガンドの結合実験も予定している。さらに、オシメンに曝されたHAT変異株におけるジャスモン酸類とサリチル酸を定量分析することで、HATによる転写制御とホルモン系シグナル伝達系のクロストークを紐解く。ジャスモン酸とエチレン非感受性変異株(coi1、ein2)も利用することで、VOC受容植物における情報伝達の詳細なネットワークを明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 4件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (13件) 備考 (3件)
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