研究課題
植物から放出される揮発性化合物(VOC)は、植物がコミュニケーションを図るための重要な情報ツールである。VOCに曝された周囲の未被害植物は害虫に対する抵抗性を高めることができるが、植物がVOCを受容し、防御遺伝子等の活性化に繋げるための作用機序は未だ不明である。そこで本研究では、植物のVOC認識・応答およびそれに伴った防御応答を担うシグナル伝達因子を同定することで、植物間コミュニケーションを介した害虫抵抗性機構の解明を試みた。【植物のメントール受容体の同定】植物の化学物質センシングにおいて重要な役割を担う受容体キナーゼ(RLK)のタンパク質ライブラリー(147タンパク質)とメントール誘導体の相互作用解析をAlphaScreenにて実施した結果、ALE2(Abnormal Leaf Shape 2)がメントール誘導体と強く結合する因子として同定された。【VOC受容植物の防御応答のためのエピジェネティク制御機構】VOCであるβ-オシメンにシロイヌナズナが曝されると、HAC1等によってヒストンアセチル化が亢進されて、ストレス応答性転写因子ファミリーであるERFの転写が活性化されることが明らかにされた(図1)。この活性化は暴露後5~10日間維持され、その後ヒストン脱アセチル化酵素であるHDA6によってリセットされた。つまり、VOCに曝された植物はエピジェネティク転写制御を介して防御応答のオンオフを制御することが示された。
2: おおむね順調に進展している
実験計画に沿って研究は計画通りにに推進されている。今年度は、VOCに曝された植物におけるエピジェネティク転写制御に関する成果報告に至った。
VOCに曝されたシロイヌナズナの食害に対する防御応答におけるヒストンアセチル化制御因子やその調節機構が明らかにされた。また、ヒストン脱アセチル化酵素であるHDA6がVOCに曝された植物におけるアセチル化の亢進をリセットするフィードバック因子であることが示唆されたことから、今後はHDA6と協調的にはたらくフィードバック因子の同定を試みる。ALE2(Abnormal Leaf Shape 2)がメントール誘導体と強く結合する因子候補として同定された。ALE2は植物の成長と発達に必要なRLKであるが、VOC受容における役割は明らかにされていないため、今後、ALE2のVOC応答機構における機能の探索を継続する必要がある。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (20件) (うち国際共著 1件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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