研究課題/領域番号 |
20H02953
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
森 昌樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 再雇用職員 (50192779)
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研究分担者 |
Ivan Galis 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (90360502)
野村 崇人 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (60373346)
井上 晴彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (10435612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / 病害抵抗性 / 虫害抵抗性 |
研究実績の概要 |
①BSR1による、広範な病害に対する抵抗性機構の解明 BSR1-OX/OsCERK1-KOイネを作出したところ、BSR1-OXと比較して病害抵抗性が低下した。よってBSR1による抵抗性にはOsCERK1が必要なことが明らかになり、論文発表を行った(Kanda et al., 2020)。次にタグ化BSR1とタグ化OsCERK1を同時発現するイネを用いたプルダウン実験を実施したが、相互作用は認められなかった。そこで、タグ化BSR1イネによりプルダウンされたタンパク質のショットガン解析(名古屋大桑田啓子博士の協力)を実施し、網羅的に相互作用候補タンパク質を同定した。さらにBSR1と他の類似のRLCKについてタンパク質の安定性を比較した。プロトプラストで各タグ化タンパク質を一過的に発現させ蓄積量を比較したが、顕著な差は認められなかった(分担者井上担当)。 ②BSR1を介した植物の害虫認識機構、害虫抵抗性機構の解析 HAMPに対する応答がOsCERK1-KOイネでは低下したので、HAMP認識へのOsCERK1の関与が示された。次に、接種した鱗翅目害虫の体重変化からBSR1-OXイネは害虫抵抗性の傾向があること、また、食害を受けたOXイネでは抵抗性応答として2種のフェノールアミド等の生産が亢進していることが明らかになった(分担者Galis担当)。 ③BSR2による、広範な病害に対する抵抗性機構の解明 -抵抗性誘導物質の同定 溶媒分画後のBSR2-OXイネ抽出物に対しシリカゲルカラムによる分画を行い、現在活性画分のバイオアッセイ(紋枯病抵抗性評価)を実施中である。また、基質化合物が想定された際の検証実験用に、BSR2の酵母への導入・発現を行った(分担者野村担当)。さらにBSR2高発現トマトが4種の重要病害に抵抗性になることに関する論文発表を行った(Maeda et al., 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたことはほぼ実行できた。BSR2-OXイネ中の抵抗性誘導物質の同定についてはやや遅れている一方で、論文を2つ発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
①BSR1による、広範な病害に対する抵抗性機構の解明 前年度BSR1-OX/OsRbohB-KOイネも作製できたので、BSR1-OXと病害抵抗性を比較することによりOsRbohBの抵抗性への関与について明らかにする。 次に、前年度取得したBSR1相互作用候補タンパク質が実際にBSR1と相互作用するのかを、酵母ツーハイブリッド法等により検証する(分担者井上担当)。また、それらが抵抗性に直接関与するかどうか調べるために 、候補遺伝子の高発現体を作出する。さらにBSR1の広範な病害抵抗性が植物の生育特性に悪影響を及ぼさないかどうか、BSR1-OXイネの隔離圃場栽培を実施し評価する(井上担当)。 ②BSR1を介した植物の害虫認識機構、害虫抵抗性機構の解析 前年度HAMP認識にOsCERK1が関与していることを明らかにできた。OsCERK1はハブ的受容体で、LysMドメインを有する他の受容体(CEBiP等)と複合体を形成することが知られている。そこで、HAMP認識においてもCEBiPが関与しているかどうかを、CEBiP-KOイネを用いて明らかにする。併せて、BSR1-OXイネで鱗翅目害虫の食害を模した傷+吐き戻し液処理条件下で揮発性物質の定量を行い、WTに比べ増減しているかどうか解析する(分担者Galis担当)。 ③BSR2による、広範な病害に対する抵抗性機構の解明 -抵抗性誘導物質の同定 本年度は前年度確立したバイオアッセイ系を用いて、引き続きBSR2酵素の反応産物となる抵抗性誘導活性のある化合物の単離・同定を実施する。溶媒分画後、シリカゲルカラム等により粗精製し、活性画分を同定する。さらにHPLCにより分画し、活性画分を絞り込む。精製は分担者野村の協力を受け実施する。機器分析については野村担当。
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