研究課題
イネの様々な葉の発生ステージや領域における網羅的な遺伝子発現解析によって遺伝子群のリスト得た。これらの中から複数の遺伝子を抽出し、茎頂付近においてin situ hybridizationによる詳細な空間的発現パターンの解析を行った。その結果、葉原基の通気組織形成に関連する組織において高い発現を示す遺伝子、葉鞘と比較して葉身原基での発現が高い遺伝子、イネ科に特徴的な気孔構成細胞(副細胞)や葉肉組織の気孔関連細胞に特異的に発現する遺伝子などを同定した。これらの機能未知遺伝子をターゲットにCRISPR/Cas9による遺伝子破壊系統(KO個体)の作出を行なった。葉原基の通気組織に発現する遺伝子、副細胞に発現する遺伝子、葉身での発現が高い遺伝子に関しては3つのパラログ遺伝子の三重変異体、葉肉組織の気孔関連細胞に発現する遺伝子に関しては単独変異体を入手することができた。それらの変異体の表現型を観察したところ、いずれも葉の外部形態や表面構造、細胞形態などに異常が認められた。したがって、葉の網羅的な遺伝子発現解析から抽出したこれらの遺伝子は、確かにイネの葉の形態形成に何らかの機能を持っており、これまで明らかになっていない形態形質に関わる、新規な制御過程の解明に向けた足掛かりになるものと考えられた。また、葉の通気組織の三次元的な配置を理解するために、(株)リガクの画像解析チームと共同でX線CTによるイネの地上部の観察を行い、非破壊で葉の内部構造を捉えることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、イネ葉のトランスクリプトームのデータ解析から葉の内部構造の制御過程に関連すると予想される複数の候補遺伝子の抽出し、それらの遺伝子破壊系統を作出した。表現型解析により形態形質に異常が見られたことから、葉の発生過程に関わる新規遺伝子の機能解析は順調であると考えられる。
今後は、得られた遺伝子破壊系統(KO個体)の詳細な表現型解析によって、遺伝子機能の推定を行う。またパラログ遺伝子の多重変異体においては、それぞれの遺伝子の単独KO個体や二重KO個体を分離させることにより、各遺伝子の機能分化に関する知見を得る。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS Genetics
巻: 17 ページ: e1009292
10.1371/journal.pgen.1009292