研究課題
植物生殖の様々な過程で本研究が注目するのは、リガンド・レセプターによる情報認識機構である。植物生殖を司るリガンド・レセプター情報認識機構を理解するために、受粉時の「雌しべにおける花粉識別(自家不和合性)」と「花粉発芽」を司るリガンド・レセプター情報認識機構に焦点をあて、これら2ステップにどのような因子(遺伝子)が関与し、どのような分子メカニズムが機能しているかを明らかにする。これを達成することで、花粉識別から花粉発芽に至る一連の植物受粉システムのうち、組織・細胞間情報認識機構が鍵となる花粉認識と花粉発芽、つまり受粉の最初と最後を司るメカニズムの本質解明を解明することを目的とする。今年度は、花粉自他認識後の花粉拒絶反応を誘導するD1/5遺伝子と花粉発芽を誘起するCR3遺伝子について、それぞれ以下の研究を実施した。花粉拒絶分子メカニズムについては、先行研究により見出した花粉自他認識後の花粉拒絶反応を誘導するD1/5遺伝子に対して、D1/5それぞれが標的とする「自他認識に続く花粉拒絶システム因子」を同定するためのChIP-Seq解析に向けたGFP融合D1/5コンストラクト(D1:GFPおよびD5:GFP)を作成した。構築した各コンストラクトをアグロバクテリウムに導入し、完全自家不和合性シロイヌナズナにそれぞれ形質転換を開始した。花粉発芽誘起分子メカニズムについては、先行研究により見出した花粉発芽を誘起するシステインリッチペプチドCR3について、その受容体候補であるPRK1/3との直接的な結合を検証するためのタグ融合コンストラクト(CR3:HisおよびPRK1/3:FLG)を作製した。構築した各コンストラクトをアグロバクテリウムに導入し、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)にそれぞれ形質転換を開始した。
3: やや遅れている
コロナ禍による研究活動の制限により、当初予定していたスケジュールから若干の遅れが生じた。しかし、所属組織からの活動再開が許可された以降は、再度スケジュールを見直し、概ね順調に進んでいる。
コロナ禍による活動制限はあるものの、適宜スケジュールを見直しながら適切に実験が進むように研究を推進する。また、より的確な研究方策・ターゲットを選定できるよう、得られたデータを随時精査する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Plant Biotechnol.
巻: 38 ページ: 77-87
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Front. Plant Sci.
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