植物受粉システムの最初と最後の鍵を握る情報認識機構の分子メカニズム解明

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20H02956
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 諏訪部 圭太 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (50451612)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 植物生殖 / リガンド・レセプター / 受粉 / シロイヌナズナ / 情報認識機構

研究実績の概要

本研究は、植物生殖の情報認識を司るリガンド・レセプター機構に焦点を絞り、受粉時の「雌しべにおける花粉識別(自家不和合性)」と「花粉発芽」の各ステップにどのようなリガンド・レセプター因子(遺伝子)が関与し、どのような分子メカニズムが機能しているか明らかにすることを目的としている。これにより、花粉識別から花粉発芽に至る一連の植物受粉システムのうち、組織・細胞間情報認識機構が鍵となる花粉認識と花粉発芽、つまり受粉の最初と最後を司るメカニズムの本質を明らかにする。
受粉時の花粉自他認識後の花粉拒絶反応を誘導するD1/5遺伝子については、ChIP-Seq解析に向けたGFP融合D1/5コンストラクトを完全自家不和合性シロイヌナズナに形質転換し、GFP蛍光による導入遺伝子の発現を確認した。自家受粉により導入遺伝子ホモ型系統を獲得し、ChIP-Seq解析に供試できる量の後代種子獲得に向けた栽培を行った。また、受粉前後・和合/不和合反応時発現遺伝子変動データの更なる解析により、花粉自他認識後の鍵反応のひとつである花粉給水を制御する因子候補を新たに見出した。
花粉発芽を誘導するCR3遺伝子については、その受容体候補であるPRK1/3との直接的相互作用を検証するためのタグ融合コンストラクト（CR3:HisおよびPRK1/3:FLG）をベンサミアナタバコにそれぞれ形質転換し、導入遺伝子の発現を確認した。CR3:His及びPRK1/3:FLGタンパク質生産のための栽培を行い、タンパク質相互作用を解析するための予備的な生化学実験（プルダウンアッセイ）を行った。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍による研究活動の制限により、当初予定していたスケジュールから若干の遅れが生じた。しかし、所属組織からの活動再開が許可された以降は、再度スケジュールを調整し、概ね順調に進んでいる。また、当初予定に加えて新たに付加した「受粉前後・和合/不和合反応時発現遺伝子変動データの更なる解析」により、花粉自他認識後の鍵反応を制御する因子候補を新たに見出した。

今後の研究の推進方策

コロナ禍による活動制限はあるものの、スケジュールや研究戦略を随時見直しながら適切かつ発展的に実験が進むよう研究マネージメントする。

研究成果

• [国際共同研究] Sunchon National University(韓国)
  • 国名: 韓国
  • 外国機関名: Sunchon National University
• [国際共同研究] University of Zurich(スイス)
  • 国名: スイス
  • 外国機関名: University of Zurich
• [雑誌論文] Spatiogenetic characterization of S receptor kinase (SRK) alleles in naturalized populations of Raphanus sativus L. var. raphanistroides on Yakushima island. (2021)
  • 著者名/発表者名: Kazuki Fukushima, Toko Kanomata, Aoi Kon, Hiromi Masuko-Suzuki, Kana Ito, Sadayoshi Ogata, Yoshinobu Takada, Yukihiro Komatsubara, Tsuyoshi Nakamura, Takumi Watanabe, Saori Koizumi, Hitoshi Sanuki, Jong-In Park, Satoshi Niikura, Keita Suwabe, Sota Fujii, Kohji Murase, Seiji Takayama, Go Suzuki and Masao Watanabe
  • 雑誌名: Genes Genet. Syst. 巻: 96 ページ: 129-139
  • DOI: 10.1266/ggs.20-00066
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著