研究実績の概要 |
イネNested association mapping集団約2,800系統の遺伝子型データ(27万SNPs)および形質データ(一穂籾数、止葉葉身幅)を用いて形質予測モデルの構築および検証を行った。遺伝子型データは複数のSNPsによるハプロタイプ型データに変換した。機械学習の回帰手法の一つであるElastic net回帰によって、ハプロタイプの効果が上位に推定されたハプロタイプで形質予測モデルを構築し、各SNPの重要度を計算した。まず、予測モデルの交差検証の結果、上位200箇所のハプロタイプまで減らしたときに予測精度は最も高くなった。また、形質値については、複数年の平均値を用いることで精度が最も高くなった。一穂籾数の予測モデルにおいて、Elastic netによって最も重要度が高いと判定されたハプロタイプの極近傍には、籾数に関与する遺伝子TAWAWA1が座乗していた。この領域については,線形混合モデルによるGWASでは検出されなかったことから、試行した形質予測モデルは、遺伝子同定手法としても有用である可能性を得た。また、遺伝子QTL同定手法のMutMapおよびQTL-seqのプログラムを改良し、使いやすさと解析速度の向上を達成した。 これまでに従来法のGWASによって同定している籾数に関与する候補遺伝子について、遺伝子発現解析およびChIP解析を実施するための形質転換体の作出を進めたが、導入する遺伝子が影響するためか、再分化個体が得られない状況となっている。イネ培養細胞を用いたレポーターアッセイから、候補遺伝子であるAP2/ERF型転写因子は、オーキシンの輸送に関与する膜タンパク質遺伝子の発現に関与することが明らかとなった。
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