19交配組合せ約2800系統から成るイネNAM集団をGenomic prediction (GP) に初めて適用した。圃場で3ヵ年以上調査した農業形質(出穂期、穂数、一穂籾数、籾サイズ、葉身形態など)および全ゲノムシーケンスで得たSNPデータを用いた。Genomic Predictionモデルの構築に際しては、全ゲノム領域のSNPをハプロタイプブロックにまとめ、親系統ごとに区別した遺伝子型情報を使用した。統計モデルには、複数の手法を用いて予測結果を比較した後、解釈性と精度を考慮して線形モデル(Elastic Net)を採用し、最終的な予測モデルを構築した。一穂籾数・籾サイズ(面積)・穂数・葉身幅の形質に関して、テストデータにおける計測形質値と予測形質値間の相関係数が0.9以上(5-fold CV)を示す予測モデルの構築に成功した。また、モデルの汎用性を確認するため、モデルの構築・精度の確認に用いたNAM集団とは独立に栽培されていた育種系統に対し、構築したモデルを適用して遺伝子型情報から形質値を予測した結果、一穂籾数・葉身幅サイズに関して相関係数0.9以上の精度が得られた。構築したモデルから、各形質に対して影響を与えるゲノム上の領域、およびその領域の親系統毎の遺伝子型が、各形質に与える効果の大きさを推定出来る。これらの情報を基に、実際に交配育種過程を考慮した上で、収量に関与する複数の形質を最適化させる実現可能性の高い遺伝子型を考案した。以上の結果を踏まえて、NAM集団や親系統の材料から、農業形質に関与する遺伝子領域を集積させる最適な交配組み合わせを選択し、多収良食味水稲品種の育成を進めていく予定である。
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