研究課題/領域番号 |
20H02963
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小川 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 上級研究員 (10456626)
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研究分担者 |
高橋 史憲 東京理科大学, 先進工学部 生命システム工学科, 准教授 (00462698)
米丸 淳一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, グループ長 (40355227)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高温耐性 / QTL |
研究実績の概要 |
インド型イネ由来の新規遺伝子座(qHT11)の特性を明らかにするため、11番染色体の7.3-22.2Mbのみインド型品種の「ルリアオバ」ゲノムで他は「コシヒカリ」ゲノムの準同質遺伝子系統NIL (qHT11)の温度適応性を試験した。45℃の高温条件で地上部生重量が高まることを確認し、25℃の常温条件や17℃の低温条件での地上部生重量は「コシヒカリ」と顕著な差は認められなかった。この結果、qHT11は高温条件下で機能することが明らかになった。 なぜqHT11が高温耐性をもたらすのかを明らかにするため、qHT11が高温耐性遺伝子を常温で発現している可能性を調査した。「コシヒカリ」と上記のNIL(qHT11)を25℃の常温条件あるいは45℃の高温条件で栽培し、葉身からRNAを抽出してシークエンス解析を実施した。まず、40,467のアノテーションされた遺伝子の中から、「コシヒカリ」において高温で発現量が増加する遺伝子(高温誘導性遺伝子)、発現量が減少する遺伝子(高温抑制性遺伝子)をそれぞれ5011(全体の12%)、4176(全体の10%)、見出した。qHT11により発現が増加する遺伝子61のうち17(28%)が高温誘導性遺伝子で、qHT11により発現が低下する遺伝子が155のうち64(41%)が高温抑制性遺伝子であった。このことは、qHT11により一部の高温応答が引き起こされていることを示唆し、これにより高温耐性がもたらされていることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、qHT11を持つ準同質遺伝子系統(NIL)の表現型の特性調査やオミクス解析を実施することを計画しているが、2021年度にそれらの解析を実施できた。またその結果、NILが高温特異的な表現型を示すこと、また、NILでは一部の高温応答が常時起きていることが明らかになった。計画していた実験を実施し、結果に対する解釈ができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、インド型品種由来のqHT11が高温耐性においてどのような機能を有し、また他形質に対しどのような作用を持つのかについてさらに解析を進めるため、以下の3つの研究を実施する。 一つ目に、コシヒカリ背景の準同質遺伝子系統NIL(qHT11)の形質調査を実施する。申請者らは日本型品種「コシヒカリ」にインド型稲品種「ルリアオバ」のqHT11領域を導入したNILを茨城県つくば市の観音台圃場にて、3列植え且つ3反復以上で栽培し、中列の複数個体に対し、到穂日数、稈長、穂長、穂数、穂重、茎葉重、千粒重、玄米品質などの調査を実施し、qHT11の高温耐性以外の作用を明らかにする。二つ目に、コシヒカリのゲノム頻度を高めた準同質遺伝子系統の作出を実施する。作出したコシヒカリNIL(qHT11)は、これまでDNAマーカーを用いて作出してきた。リシークエンス解析を実施し、ルリアオバのゲノム領域が目的領域以外にないことを確認する。最後に、NIL(qHT11)のトランスクリプトーム解析を実施し、候補遺伝子の類推を進める。
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