研究課題/領域番号 |
20H02963
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小川 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 上級研究員 (10456626)
|
研究分担者 |
高橋 史憲 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 准教授 (00462698)
米丸 淳一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, グループ長 (40355227)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 高温耐性 / QTL |
研究実績の概要 |
インド型品種の「ルリアオバ」のqHT11領域を有する「コシヒカリ」に背景の準同質遺伝子系統NIL (qHT11)について、室内でのチャンバーを用いた試験により、qHT11が高温条件下でバイオマスを増加させる機能があることが明らかになった。そこで今年度は、NIL (qHT11)について圃場栽培試験を実施した。昨年は、6月下旬の気温が平年より4℃程度高く、高温環境での栽培試験となった。UAVを用いた経時的な観察を実施し、6月下旬(圃場移植後1か月)の初期生育を調査したところ、NIL (qHT11)の植生指数(NDVI)はコシヒカリに比べて8%、草高は13%増加しており、高温下での初期生育が向上していることが明らかになった。コシヒカリとNIL (qHT11)について10個体ずつ収穫物調査をしたところ、NIL (qHT11)では茎葉重が12%増加した。これは最大稈長が5%増加していることが影響していると考えられた。その一方で穂重については4%減少しており、初期生育の良さが収量の増加には結びつかなかった。2020年に実施した野外試験結果と比較すると概ね同様の傾向であり、qHT11の初期生育への貢献が示唆されるが、2020年は穂重の増加がみられていたことから、収量については野外の環境影響を強く受け、その寄与は不安定であることが示唆された。 NIL(qHT11)の「ルリアオバ」ゲノムの混入を減らしqHT11の候補領域を狭めるため、コシヒカリで戻し交雑をした系統を作出し、その種子を増殖した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、qHT11を持つ準同質遺伝子系統(NIL)の表現型の特性調査やオミクス解析を計画通り実施してきた。またその結果、NILが高温特異的な表現型を示すこと、また、NILでは一部の高温応答が常時起きていることが明らかになっている。圃場でも、初期生育や最終的な茎葉に対する作用が明らかになり、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
インド型品種由来のqHT11が高温耐性においてどのような機能を有し、また他形質に対しどのような作用を持つのかについてさらに解析を進めるため、コシヒカリのゲノム頻度を高めた準同質遺伝子系統の作出を実施する。また、NIL(qHT11)のトランスクリプトームデータの更なる解析を推め、候補遺伝子の類推を行う。
|