研究課題
2020年に岐阜県中濃地域に発生した大規模な水稲不稔発生に高温がかかわっていたかを明らかにするために,生殖成長期(出穂前30日頃から開花期)のイネの高温感受性の時期と強さを明らかにし,2020年の夏の高温によりどの程度の不稔が発生したかをシミュレーションした.岐阜県水稲奨励品種である11品種を含む水稲13品種(うるち性品種8品種,もち性品種4品種,酒米1品種)を供試した.2020年に大規模な不稔が発生した品種の穂ばらみ期・開花期の高温条件を模して最高気温(13:00~16:00)が35℃,37℃,39℃となる3処理区を設定し,高温処理を施した.処理期間を6日とし,多数のポットを準備して,出穂のおよそ24日前から開花終了まで3日ごとに1ポットずつ時期をすらして処理を施すことで様々な発育ステージの材料に高温条件を与えた.出穂期には穂ごとに出穂日を書いたタグをつけた.高温処理後は屋外で成熟期まで栽培したのちに稔実調査を行った.少しでも子房に肥大が確認された花を受精と判断した.開花期の高温により,受精率は有意に低下したが,稔実率に有意な品種間差異は認められなかった.穂ばらみ期の高温では稔実により有意な低下と品種間差異が認められ,高温により早生品種のあきたこまち,たかやまもちの稔実率が有意に低下したのに対し,晩生品種のハツシモ,みのにしきの稔実率は低下しなかった.材料が遭遇した高温と不稔の発生との関係から高温不稔の発生を予測・評価するモデルを作成した.2020年の夏の気温をモデルにあてはめた結果,晩生品種の出穂期の8月下旬に出穂した場合,品種によっては33%程度の不稔の発生が推定されたが,晩生の主力品種のハツシモでは,不稔の発生は15%程度と推定された.この結果から,2020年の不稔の発生は高温のみによるものではなく,他の要因の関与が推察された.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Field Crops Research
巻: 277 ページ: -
10.1016/j.fcr.2021.108400