研究課題/領域番号 |
20H02965
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉浦 大輔 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50713913)
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研究分担者 |
岡村 昌樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 主任研究員 (00757908)
荒井 裕見子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 上級研究員 (50547726)
小林 伸哉 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 熱帯・島嶼研究拠点, 主任研究員 (70252799) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非破壊計測 / LAI / 光合成有効放射 / 近赤外放射 / 呼吸速度 |
研究実績の概要 |
2020年に引き続き、イネ群落成長の指標である葉面積指数 (単位土地面積あたりの葉面積、LAI) を、光学センサーにより非破壊的・連続的に推定する手法を用いて、日本4地点における多収イネの収量決定要因を探索した。今年度はイネを2品種に絞り、光学センサーを増設して各品種3反復となる試験設計とした。愛知県東郷町、長野県須坂市、新潟県上越市、茨城県つくば市 の4地点における水田圃場において、5月から10月にかけて、イネ2品種 (オオナリ、北陸193号) を多肥条件 (16 g N m-2) で栽培した。各地点・各品種においてNIRとPARの連続計測により生育期間に渡ったLAIの連続的な成長を非破壊的に推定するとともに、2~4週間毎に破壊的なサンプリングも行い、9月から10月にかけて収量および収量構成要素を調査した。
北陸193号は、長野県において生育後期までLAIを高く維持している一方で、愛知県ではLAIが生育後期にかけて大きく減少していた。日本4地点間で比較したとき、生育後期までLAIを維持していた地域ほど収量も増加していた。一方でオオナリは全地点において生育後期にかけてLAIが減少しており、収量との関係性は低かった。
登熟期の気温が低いほど収量が増加する可能性を検証するため、閉鎖系の呼吸チャンバーによるイネ株あたりの呼吸測定の予備試験を行った。その結果、気温の低い明け方の呼吸速度は日中の約半分程度であったことから、冷涼な地域ほど呼吸速度の低下による炭水化物消費の抑制が収量増加に寄与する可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学センサーの反復数を増やすことで、LAIの非破壊・連続計測がより安定して行えるようになった。2020年からの日本4地点の栽培試験のデータが2年分蓄積したことで、LAI、微気象、収量関連形質の関係性、およびその品種間差について、予備的な解析が可能になりつつある。 また、閉鎖系チャンバー系によってイネ株あたりの呼吸速度の測定が可能であることが分かったため、夜間の呼吸速度の自動測定システム開発に着手することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、多収品種オオナリと北陸193号について3年面の日本4地点の栽培試験を行う。また、マイクロコントローラーを用いた自動フタ開閉による夜間のイネ呼吸速度の測定システムを開発し、呼吸速度の温度依存性を明らかにする。得られたデータをもとに、夜間気温とイネのバイオマス推移を組み合わせた数理モデルによって、登熟期間の総呼吸量を算出するとともに、今後予想される夜間気温の増加が呼吸量の増加を通じてどれだけ収量に影響を与えるのかについてのシミュレーションを行う。
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