C4植物が環境ストレスを受けると、葉肉細胞の周縁部に散在している葉緑体は維管束鞘細胞側に移動する“凝集運動”を起こす。この凝集運動の誘導には葉内CO2濃度の低下が関係しているが、その誘導機構の詳細は不明である。本研究では、凝集運動の誘導機構と生理的役割を解明して、葉緑体凝集運動をC4植物が発揮する高い光合成能およびストレス耐性能の一要因として位置づけられるかを明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の結果が得られた。 人工気象室内(明期28℃、暗期20℃)で生育中のシコクビエ植物体を晩秋の晴天野外へ昼間(約20℃)に移動させると葉肉葉緑体の凝集運動が観察されたが、日没後には分散配置の傾向が見られた。また、野外への移動に伴う凝集運動は非遮光区でのみ観察され、誘導には強光が必要であることが判明した。 実験室の人工気象器間の移動実験では、常温生育光区から低温強光区への移動の方が常温強光区への移動よりも顕著な凝集運動が起こっていた。また、低温生育光区への移動でも凝集運動が見られたが、低温強光区への移動において凝集運動がより強く起こる傾向が見られた。また、低温強光区への移動では光阻害が起こっていた。以上より、明所下での低温シフトが凝集運動誘導の一要因だと考えられた。低温下では代謝活性が低下し、強光に伴う光阻害がより顕著になりやすく、凝集運動が誘導されやすいと思われる。C4植物は低温下で不利だと言われるが、自然環境下において凝集運動がそのストレス軽減に関与しているのかを明らかにする必要がある。
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