研究課題/領域番号 |
20H02967
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 朋之 (勝部朋之) 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50224473)
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研究分担者 |
氏家 和広 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (60465276)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イネ / 白未熟粒 / 突然変異体 |
研究実績の概要 |
イネ登熟期の高温により、白未熟粒が発生し問題となっている。本研究では、高温条件下でのみ白未熟粒を多発するユニークな突然変異体「13-45」を利用して、(1)白未熟粒発生に及ぼす主たる環境・生理的要因を特定し、高温ストレス応答機構の解明を目指す。また、(2) 「13-45」の原因遺伝子であるcpHsp70-2の自然変異を探索して、高温耐性品種育成の可能性を探る。さらに、(3) Hsp70など熱ストレスタンパク質に一般に認められるプライミング効果が白未熟粒発生に及ぼす影響を調べることで、栽培技術改善の可能性を探ることを目的とした。 「13-45」の子実より抽出分画した不溶性画分に含まれる比較的高純度のcpHsp70-2を二次元電気泳動により分離し、そのN末端アミノ酸配列を調べる予定であったが、十分な量のスポットを得ることが出来ず、引き続き分析条件の改善を試みている。一方、典型的な夏の京都の温度変化を再現した人工気象器を用いて、登熟期の任意の2日間のみ高温処理することで、「13-45」において最も高温感受性が高い時期を特定したが、2021年度は8月中旬の低温多雨によりファイトトロン内の気温が低下して不稔を多発したため、、その追試は出来なかった。次年度に再び試みるとともに、感受性期前にマイルドな高温ストレスを与えることで、感受性期の高温ストレスの影響が緩和されるかどうかを調べる予定である。また、「13-45」に重イオンビームを照射することで、白未熟化を促進または抑制する因子を効率的に探索するとともに、窒素施肥が白未熟化に及ぼす影響を解析した。引き続き両実験を行う予定である。さらに、「13-45」とその親品種「日本晴」の子実成長速度を穂培養法により調べたところ、25℃では両品種間で差異はなかったものの、30℃では「13-45」の子実増加速度が低いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「13-45」の子実タンパク質の分析については未だ顕著な成果は得られていないものの、分析条件の改良は着実に進行している。登熟期の任意の2日間の高温処理は異常気象のため上手く行かなかったが、対策を立ててあり、次年度に追試可能である。一方、「13-45」に重イオンビームを照射することで、白未熟化が促進または抑制された系統を複数得ることが出来た。さらに、窒素施肥が白未熟化に及ぼす影響を子実サイズ、子実当たり利用可能同化産物量やcpHSP70-2蓄積量の面から解析し、興味深い知見を得た。また、「13-45」とその親品種「日本晴」の子実成長速度を穂培養法により調べ、高温下で「13-45」の子実増加速度が低くくなることを見出した。以上より、細胞、個体、群落レベルで白未熟粒研究を進めることができ、2022年度の研究計画につなげることができたと考えられるから。
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今後の研究の推進方策 |
「13-45」の子実タンパク質の分析については、二次元電気泳動における装置の改良により試料負荷量を増やし、十分なスポット強度を得ることを試みる。十分な精製タンパク質が得られれば、N末端アミノ酸配列を調べることで、その細胞内局在を推定する。登熟期の任意の2日間の高温処理では、これまで適用していた短日処理を止めることで出穂期を遅らせ、ファイトトロンの温度制御を容易にする。高温処理には人工気象器を使うことで、屋外の気象条件に影響されないようにする。一方、「13-45」に重イオンビームを照射することで得られた、白未熟化が促進または抑制された系統の世代を進めて、再現性を確認する。さらに、窒素施肥が白未熟化に及ぼす影響と、「13-45」とその親品種「日本晴」の子実成長速度に対する温度の影響を前年度にならい追試する。以上より、細胞、個体、群落レベルで白未熟粒研究を進める。
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