研究課題/領域番号 |
20H02976
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
加藤 雅也 静岡大学, 農学部, 教授 (10432197)
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研究分担者 |
張 嵐翠 静岡大学, 農学部, 特任助教 (20767371)
馬 剛 静岡大学, 農学部, 助教 (20767412)
本橋 令子 静岡大学, 農学部, 教授 (90332296)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カンキツ / 回青 / カロテノイド / クロロフィル / フラベド |
研究実績の概要 |
令和3年度は、樹上のバレンシアオレンジの果実と培養したフラベドを用いて次の調査を行った。 令和2年度に、4月から6月まで1か月ごとにサンプリングしたバレンシアオレンジの果実を用いて、クロロフィルおよびカロテノイド代謝に関わる遺伝子の発現解析を行った。クロロフィル生合成に関わる一部の遺伝子の発現レベルは上昇する傾向を示した。一方、クロロフィルの分解に関わるCitPPHの遺伝子発現レベルは減少する傾向を示した。また、カロテノイド生合成に関わるほとんどの遺伝子の発現レベルは減少する傾向を示した。したがって、樹上の果実では、以上のような遺伝子の発現変動により、回青現象が進行したことが明らかとなった。 令和2年度にバレンシアオレンジのフラベドを、MS培地に植え付け、青色LED光照射を行った照射区および暗黒下の対照区で培養した。これらのサンプルについて、クロロフィルおよびカロテノイド代謝に関わる遺伝子の発現解析を行った。クロロフィルの蓄積が認められた青色光照射区では、培養2週においてLuteinおよびβ-Caroteneの生合成に関わる遺伝子、9-cis-Violaxanthin の分解に関わる遺伝子およびViolaxanthinの還元に関わるCitVDEの遺伝子発現レベルが対照区と比較して高かった。また、培養4週では、ほとんどの遺伝子の発現変動は培養2週と同様の傾向を示した。クロロフィル含量は、培養2週および4週において青色光照射区で増大が認められ、クロロフィル生合成に関わる一部の遺伝子の発現レベルが対照区と比較して高かった。したがって、培養したバレンシアオレンジのフラベドでは、青色光照射は回青現象を引き起こす要因の1つであり、青色光によりクロロフィルおよびカロテノイド代謝に関わる遺伝子の発現変動が起き、フラベドが回青したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、下記の項目について研究を計画した。 (1)「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝変動の調査 (2)「回青」発生過程のフラベド組織における電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察 (3)培養したフラベド組織を用いた様々な波長(色)の光、植物ホルモン、水ストレス、温度等の要因が「回青」に及ぼす影響の調査 (1)の「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝に関する研究では、樹上の「回青」が認められたバレンシアオレンジの果実におけるカロテノイドおよびクロロフィル代謝に関わる遺伝子の発現解析を行った。(2)の電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察では、樹上で「回青」が発生した果実のフラベド組織についてクロロプラストが認められるか調査する。今年度は、電子顕微鏡を用いて緑色と橙色の果実のフラベドにおけるクロロプラスとを調査するために、再現性を確認するためのサンプルを調製した。(3)の培養したフラベドを用いた研究では、フラベドにLEDを用いた青色光照射を行うことにより、回青現象が認められるか調査を行った。回青現象が認められたフラベドについて、カロテノイドおよびクロロフィル代謝に関わる遺伝子の発現解析を行った。以上のように、概ね計画通りに研究が進んでおり、進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、下記のように、樹上の「回青」果実と培養したフラベドを用いて次の調査を行う。 (1)「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝変動の調査 (2)「回青」発生過程のフラベド組織における電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察 (3)培養したフラベド組織を用いた様々な波長(色)の光、植物ホルモン、水ストレス、温度等の要因が「回青」に及ぼす影響の調査 (4)マイクロアレイ解析を用いた網羅的な遺伝子発現解析による「回青」に関わる転写調節遺伝子の単離およびアグロインフィルトレーション法による遺伝子の機能解析 本年度は、(1)~(3)についての研究課題を行う。(1)の「回青」発生過程におけるカンキツ果実の二次代謝産物および栄養成分の代謝に関する研究では、樹上の「回青」が認められる果実におけるフラボノイド代謝の変動を調査する。(1)については、加藤雅也(研究代表者)および馬剛助教が担当する。(2)の電子顕微鏡を用いたクロモプラスト(有色体)からクロロプラスト(葉緑体)への形態変化の観察では、樹上で「回青」が発生した果実のフラベド組織についてクロロプラストが認められるか、引き続き調査を行う。(2)については、本橋令子教授が担当する。(3)の培養したフラベドを用いた研究では、ジベレリンが「回青」を引き起こす要因の1つであることから、ジベレリンまたはジベレリンの生合成阻害剤処理をフラベドに行う。培養したフラベドについて、カロテノイド含量・組成およびクロロフィル含量をHPLCにより測定する。(3)については、加藤雅也(研究代表者)および張嵐翠特任助教が担当する。令和4年度は、以上のような研究を計画的に推進する。
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