研究課題/領域番号 |
20H02977
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久保 康隆 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (80167387)
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研究分担者 |
矢野 健太郎 明治大学, 農学部, 専任教授 (00446543)
阿部 大吾 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 主任研究員 (10414773)
加藤 雅也 静岡大学, 農学部, 教授 (10432197)
牛島 幸一郎 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (20379720)
赤木 剛士 岡山大学, 環境生命科学学域, 研究教授 (50611919)
河井 崇 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (90721134)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低温遭遇 / エチレン / 果実成熟 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
本研究は、低温誘導成熟機構を、温帯性果実種横断的にゲノム・トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、遺伝子組換え技術などを駆使して解析し、その統合的理解を目指す先駆的学術的取り組みである。低温誘導成熟果はエチレン誘導果よりも品質保持期間が長く、低温感受性の品種間差異は成熟の早生・晩生性に密接に関与している。本研究は、収穫後ロス低減に直結する新品質保持技術開発と分子マーカー開発による育種への貢献を目的とする。 本年度は、研究の第2段階として、ウンシュウミカン、カキ、セイヨウナシ、リンゴ果実でのRNAseq解析、LC解析に基づいて成熟制御システムの全体像を把握するとともに、低温応答遺伝子および代謝物を抽出を試みた。今回解析したいずれの果実でもエチレン処理および低温遭遇によって、細胞壁分解系遺伝子、クロロフィル分解系遺伝子発現が刺激されることが明らかになった。さらに、ウンシュウミカンとレモン果実の低温応答に関するRNAseqデータの解析によって、カンキツでは、共通してERF3遺伝子が低温応答に重要な転写因子候補であることが示された。また、 ‘小原紅早生’ミカンではエチレンシグナルと低温シグナルによりCCD4遺伝子が活性化され、アポカロテノイド類が特異的に蓄積して成熟時に紅色に着色することが示された。また、‘富有’カキでは5℃貯蔵によってエチレン生成が刺激され果肉軟化と水浸状化を特徴とする低温障害症状がが進行するが、20℃以上または0℃では果肉軟化が抑制された。ただし、0℃貯蔵では常温に移行すると急激にエチレン生成の誘導と果肉軟化が進行した。1ヶ月程度なら20℃の常温貯蔵が可能であることが示された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAseq解析はほぼ計画通り実施できた。代謝物解析にはMS解析に変えてLC解析を行いカロテノイドの詳細な組成分析を行った。プロモーター解析には一部に遅れが生じたが、カキ果実では常温貯蔵という貯蔵技術の一般常識とは異なる手法が有効であることを見出した
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今後の研究の推進方策 |
温度応答性の違いが明確になった早生,晩生品種を選び,ddRAD-seq法によるゲノム分析を行い、品種間のSNP検出を行う。なお、DNAメチル化 による制御も検討する。温州ミカンとカキの品種は突然変異による早晩生変異系統であるので、温度応答変化の原因配列の同定が期待できる。 また、抽出した低温応答型転写因子遺伝子について遺伝子組換え技術、yeast two-hybrid法を用いて相互の結合関係を解析し、信号伝達経路を 解析する。これらに基づいて、低温応答特異的転写因子および信号伝達因子を特定する。前年に開発した品質保持術を各果実種の複数品種にお いて検証する。また、カキ、ウメ、ウンシュウミカン果実の低温応答についてRNAseq解析を用いて広範囲に検討する。
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