研究課題/領域番号 |
20H02980
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
北島 宣 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 特任教授 (70135549)
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研究分担者 |
山本 雅史 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (00305161)
伊藤 謙 大阪大学, 総合学術博物館, 講師 (00619281)
深尾 葉子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (20193815)
中村 彰宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20264814)
中野 道治 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (40705159)
清水 徳朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (90355404)
西村 和紗 京都大学, 農学研究科, 助教 (60835453)
田中 圭子 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 特命研究員 (20435051)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 園芸学 / 在来カンキツ / 類縁関係 / 博物館 / アーカイブ |
研究実績の概要 |
東アジアの在来カンキツのDNA解析では、359個体について131のSSRマーカーについての調査が終了し、これまでほとんど研究が行われていなかったライム、リモニア、イーチャンパペダ、カシーパペダ、シキキツについて、その分布や類縁関係について考察することができた。また、田中の分類はゲノム分析においてそれらの密接な類縁関係が示されており、新たな分類体系を構築する際に、田中の分類は重要な基盤になることが示唆された。一方、田中が作製した標本数の経年的変化と国立台湾大学における田中の著作の調査により、田中のカンキツ分類研究の概要を把握することができた。また、和歌山の橘本神社に開設されたカンキツ博物館である「常世館」に保存されている橘本神社所有の田中資料の調査により、その文化的価値を広く一般にアピールし、世界農業遺産認定に向けた取り組みを行った。これらの成果は、2022年3月21日の園芸学会春季大会テーマセッションにおいて口頭発表した。 田中のスケッチブックは11冊、940ページあり、各ページにカンキツ種のスケッチと手書きの英文によって説明文が記述されている。この手書き英文の活字化を行うとともに、英文の和訳を行い、現在、4冊目の172ページ分まで進捗している。国内の在来ユズの調査では、京都、兵庫、福井、石川の日本海沿岸地域とユズの主要産地である高知の古木調査を行い、48個体を調査して推定樹齢100年以上の4個体を発見した。そのうち、高知県北川村には樹齢300年といわれている古木が存在した。クローンであるユズの多型マーカー解析では、ddRAD-seq法に基づき100種類のCAPsマーカー候補を作成した。これらのマーカーについて、再現性を確認中である。一方、古文におけるユズ記載の調査では、平安時代に京都にユズが存在しており、貴族の酒宴の席での話や室町時代の料理書などに記載されてた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンキツ分類学者田中長三郎のカンキツ分類について、これまで未公開の田中のカンキツ研究ノート(スケッチブック)はカンキツ種のスケッチとその説明を手書きの英文で書かれており、手書き英文の活字化とその和訳を実施している。また、田中のさく葉標本と東アジアの在来カンキツのDNA解析を行い、これまでほとんど研究が行われていなかったカンキツ種に関する知見を得た。さらに、新たなカンキツ分類の構築するうえで、田中の分類を基盤とすることが重要と考えられた。一方、日本海地域の国内の在来ユズ調査を行うとともに、クローンであるユズのDNA解析による多型マーカー開発では、100個のCAPsマーカー候補を作出した。古典におけるユズの記載調査では、京都において平安時代からユズが利用されていることが明らかとなった。このように、当初予定していた海外在来カンキツ調査を国内のユズ調査にシフトすることで、ほぼ順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
田中のスケッチブックの手書き英文の活字化とその和訳については、項目の優先順位をつけて順次進め、これらの情報のアーカイブ化を行っていく。また、その記載内容を検討し、田中の分類の基盤情報を整理する。東アジアの在来カンキツのDNA解析にもとづき、類縁関係を詳細に検討して、これまで研究がすすめられていない種の分布や類縁関係を明らかにするとともに、田中の分類を基盤とする新たな分類体系を提言する。国内のユズの探索では、九州、中国、関東、東北地域のユズ古木調査を行い、全国の幅広い地域の在来ユズの試料を収集する。また、DNA多型マーカーの開発では再現性の高いCAPsマーカーを明らかにし、それに基づく各地域のユズの類縁関係を明らかにし、国内におけるユズの伝播を推定する。さらに、古文におけるユズやタチバナの記載について調査し、伝播の時代的考証を行う。一方、和歌山橘本神社の「常世館」のカンキツ資料のアーカーブ化を進め、世界農業遺産申請の支援をして社会実装に貢献する。
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