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2022 年度 実績報告書

活性酸素の受容体による柔軟な植物免疫誘導機構の分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 20H02984
研究機関名古屋大学

研究代表者

吉岡 博文  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30240245)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード活性酸素 / ROSセンサー
研究実績の概要

本研究の目的は、植物免疫応答の鍵を握るROSセンサータンパク質を網羅的に探索し、機能を調べることによってROSによる免疫統御機構を明らかにすることである。ROSは、世界中で防御応答のマーカーとして観察されているが、その作用機構について説明することができない。ROSであるH2O2は、そのセンサータンパク質のシステインのチオール基 (-SH) を酸化し (-SOH;スルフェン酸)、分子内または分子間でジスルフィド結合を形成する。あるいは、スルフェン酸が還元型グルタチオン (GSH) と反応してS-グルタチオン化 (-S-SG) することによってROSセンサータンパク質の構造を変化させ、様々な細胞応答を引き起こすことが知られている。
これまでに、PTIおよびETIにおいてスルフェニル化されると予想される多くのタンパク質を得ることができた。これらの中で、カルシウムチャネルと予想される候補タンパク質を大腸菌で発現させ、リコンビナントタンパク質を得た。リコンビナントタンパク質を過酸化水素によって酸化させ、スルフェン酸と特異的に結合するdimedoneを加えた後、抗システイン-dimedone抗体を用いてウエスタン解析した。その結果、候補タンパク質がin vitroでスルフェニル化されることを確認した。本年度は、さらに、標的システインをアラニンに置換した変異リコンビナントタンパク質は、スルフェニル化されないことを確認した。
ベンサミアナタバコ葉において候補遺伝子を抑制し、病原菌に対する影響を調べた。その結果、ジャガイモ疫病菌および灰色かび病菌が著しく感染するようになった。さらに、ベンサミアナタバコ葉に発現させ、病害シグナルを与えた後に免疫沈降することで標的タンパク質を回収し、in vivoでスルフェニル化されることを確かめた。しかし、現時点ではLCMS/MS解析の結果は得られていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ROSは、植物免疫応答を局部的、全身的あるいはPTIおよびETIにおいて重要なシグナル分子であると認識され、世界中で防御応答のマーカーとして観察されているが、その作用機構について説明することができない。ROSであるH2O2は、そのセンサータンパク質のシステインのチオール基 (-SH) を酸化し (-SOH;スルフェン酸)、分子内または分子間でジスルフィド結合 (-S-S-) を形成する。あるいは、スルフェン酸が還元型グルタチオン (GSH) と反応してS-グルタチオン化 (-S-SG) することによってROSセンサータンパク質の構造を変化させ、様々な細胞応答を引き起こすことが知られている。
これまでに、YAP1を用いてROSセンサーを網羅的に探索し、PTIおよびETIにおいてスルフェニル化されると予想される多くのタンパク質を得ることができた。これらの中で、カルシウムチャネルと予想される候補タンパク質を大腸菌で発現させ、リコンビナントタンパク質を得た。リコンビナントタンパク質を過酸化水素によって酸化させ、スルフェン酸と特異的に結合するdimedoneを加えた後、抗システイン-dimedone抗体を用いてウエスタン解析した。その結果、候補タンパク質がin vitroでスルフェニル化されることを確認した。
本年度は、ベンサミアナタバコ葉において候補遺伝子を抑制し、病原菌に対する影響を調べた。その結果、ジャガイモ疫病菌および灰色かび病菌が著しく感染することが確かめられた。さらに、候補遺伝子を抑制したベンサミアナタバコにおいて、スルフェニル化されるシステインを置換した変異候補遺伝子では、灰色かび病菌に対する抵抗性を相補することができなかった。この結果は、標的システインが抵抗性発現において重要な役割を果たすことを示している。以上のように、おおむね予定通り研究が進展した。

今後の研究の推進方策

これまでに、カルシウムチャネルと予想される候補遺伝子のコンビナントタンパク質を過酸化水素によって酸化させ、スルフェン酸と特異的に結合するdimedoneを加えた後、抗システイン-dimedone抗体を用いてウエスタン解析した。その結果、候補タンパク質がin vitroでスルフェニル化されることを確認した。さらに、得られたROSセンサーのスルフェニル化の機能を解析する目的で、dimedoneより強くスルフェニル化されたシステインと結合するBTD (benzothiazine-based probe) で化学ラベルし、コンビナントタンパク質が過酸化水素によって酸化されることを確認した。また、ベンサミアナタバコ葉に候補遺伝子を発現させ、病害シグナルを与えた後に免疫沈降することで標的タンパク質を回収し、in vivoでスルフェニル化されることを確かめた。しかし、現時点ではLCMS/MS解析の結果は得られていない。
本年度は、dimedoneに比べて100倍以上スルフェニル化されたシステインとの反応性が高いBTDを用いてin vivoにおける候補タンパク質のスルフェニル化を調べる。タグを付加した候補遺伝子をベンサミアナタバコ葉で発現させ、病害シグナルを与えた後に免疫沈降することで標的タンパク質を回収し、in vivoでスルフェニル化されることを確かめる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Dynamics of plant immune MAPK activity and ROS signaling in response to invaders2023

    • 著者名/発表者名
      Hirofumi Yoshioka, Yuta Hino, Keiichiro Iwata,Takaya Ogawa, Miki Yoshioka, Nobuaki Ishihama, Hiroaki Adachi
    • 雑誌名

      Physiological and Molecular Plant Pathology

      巻: 125 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.pmpp.2023.102000

    • 査読あり
  • [学会発表] Proteomic screening and functional analysis of plant immune ROS sensors: NbGLR positively regulates plant immune responses2023

    • 著者名/発表者名
      Yuta Hino, Keita Okamoto, Taichi Inada, Miki Yoshioka, Tatsuhiko Kondo, Hitoshi Mori, Hirofumi Yoshioka
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 過硫化システイン (Cys-SSH) および多硫化システイン (Cys-SSnH, n≧1) は植物免疫応答におけるROSシグナルを介在する2023

    • 著者名/発表者名
      日野雄太・岡本渓太・稲田太一・吉岡美樹・吉岡博文
    • 学会等名
      令和5年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] NbGLR3.7, a candidate of ROS sensor protein, positively regulates plant immune responses in a target cys-teine-dependent manner2022

    • 著者名/発表者名
      Yuta Hino, Keita Okamoto, Taichi Inada, Miki Yoshioka, Tatsuhiko Kondo, Hitoshi Mori and Hirofumi Yoshioka
    • 学会等名
      12th Japan-US Seminar in Plant Pathology
    • 国際学会
  • [学会発表] Dynamics of plant immune MAPK activity in response to pathogen and insect attacks2022

    • 著者名/発表者名
      Hirofumi Yoshioka, Yuta Hino, Kenichiro Iwata, Hiroaki Adachi, Nobuaki Ishihama and Miki Yoshioka
    • 学会等名
      12th Japan-US Seminar in Plant Pathology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ROSは植物免疫に関わるROSセンサータンパク質候補 NbGLRの標的システインを酸化する2022

    • 著者名/発表者名
      日野雄太・岡本渓太・稲田太一・吉岡美樹・近藤竜彦・森 仁志・吉岡博文
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会関西部会
  • [学会発表] Mining of ROS sensor proteins that positively regulate plant immune responses2022

    • 著者名/発表者名
      Hirofumi Yoshioka, Yuta Hino, Keita Okamoto, Taichi Inada, Tatsuhiko Kondo, Hitoshi Mori and Miki Yoshioka
    • 学会等名
      The 12th International Conference on the Biology, Chemistry, and Therapeutic Applications of Nitric Oxide
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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