研究課題/領域番号 |
20H02995
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
浅井 秀太 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (30723580)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 罹病性遺伝子 / 植物病原菌間相互作用 / 病害防除 |
研究実績の概要 |
宿主植物と病原菌の関係においては、病原菌が標的とする、感染するために必要な宿主側の遺伝子(罹病性遺伝子)が存在する。罹病性遺伝子を欠損させた植物体には病原菌は感染することができないため、病害抵抗性に貢献しうる遺伝資源と期待される。そこで本研究では、新奇罹病性遺伝子を同定し、その機能を解析すると共に、有用作物への応用を目指す。 - フザリウム属菌に対する抵抗性変異体のスクリーニングを実施したが、再現性のある抵抗性個体は得られなかった。次年度が最終年度となるため、スクリーニングはストップし、これまでに見出した変異体の解析を進めて行く。 - べと病菌が感染している細胞で特異的に発現が誘導されている宿主植物遺伝子の欠損および過剰発現シロイヌナズナにおいて、べと病菌に対する抵抗性の評価を行ったところ、過剰発現において抵抗性を増進する数遺伝子、ならびに罹病性を増進する遺伝子を一つ見出した。 - 過剰発現により罹病性が増進した遺伝子は、罹病性遺伝子の候補であるが、その欠損変異体はべと病菌に対して抵抗性を示さなかった。調べたところ、相同遺伝子が隣接して座乗することがわかったため、現在CRISPR法により、相同遺伝子と共に欠損させた株の作製を進めている。 - これまでに、DNAメチル基転移酵素遺伝子に導入された変異により抵抗性が付与されている変異体Ha_13-1を得ていた。今年度、Ha_13-1において特異的なDNAメチル化のパターンを示す遺伝子(標的遺伝子)を見出した。 - Ps_1は、分泌型のサブチリシン様セリンプロテアーゼ(Subtilase : SBT)遺伝子に変異が見られ、SBTのプロテアーゼ活性依存的に宿主植物の罹病性が増進していることを見出していた。本年度、SBT過剰発現シロイヌナズナ由来の細胞間隙液が同様の活性(プロテアーゼ活性依存的な罹病性増進)を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
順遺伝学的スクリーニングにより、新たにフザリウム属菌に対する抵抗性変異体の取得を試みたが、うまくいかなかった。そこで、これまでに得られている抵抗性変異体(e.g. Ha_13-1、Ps_1)の機能解析をしっかりと進めて行く。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、病原菌感染細胞特異的トランスクリプトーム解析により罹病性遺伝子候補が一つ得られた。現在、病原菌との相互作用時における時空間的な細胞生物学的解析を進めるための形質転換体の作製を進めており、分子遺伝学的解析と併せて、遺伝子の機能に迫る。また、有用作物においてゲノム編集技術であるCRISPR 法を使用することで得られた罹病性遺伝子候補と相同性の高い遺伝子の変異体を作製し、作物における有用性の評価(病害抵抗性の評価)を行う。 順遺伝学的スクリーニングにより得られたHa_13-1およびPs_1は、それぞれDNAメチル基転移酵素遺伝子、およびサブチリシン様セリンプロテアーゼ(Subtilase : SBT)遺伝子に変異が見られ、それにより抵抗性が付与されていると考えられる。病原菌との相互作用時における、これら遺伝子の機能を明らかにする。具体的には、DNAメチル基転移酵素遺伝子については、DNAメチル化解析およびトランスクリプトーム解析により、絞り込んだ標的遺伝子候補について、分子遺伝学的に表現型との関連を明らかにする。SBT遺伝子については、プロテアーゼ活性依存的に宿主植物の罹病性の増進に寄与している表現型について、SBT過剰発現シロイヌナズナ由来の細胞間隙液にて再現できたため、細胞間隙液中のタンパク質パターンの解析を通して、SBTの基質を明らかにする。
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