研究課題/領域番号 |
20H03000
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伴野 豊 九州大学, 農学研究院, 教授 (50192711)
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研究分担者 |
金児 雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90633610)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンソミック系統 / 染色体置換 / カイコ / クワコ / 比較ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究は染色体置換系統(コンソミック系統)の育成が根本となる。この育成に関しては別の研究経費で進めてきた系統群(セミコンソミック系統)が有効に利用できる。本年度は昨年度に引き続き、セミコンソミック系統をベースにコンソミック系統の育成を各染色体に設定したPCR増副産物に基づくジェノタイピングによって進めた。その結果、新たに5つの染色体(3、6、7、8、10染色体)について目的とする系統の育成を達成した。各染色体のジェノタイピングは当該染色体上の5箇所のDNA領域に対して行ったので、育成した系統のうち、第3、6、7、8について完成度をホールゲノムにより比較解析した。染色体末端領域にはヘテロな染色体構成となっていることが判明した。染色体末端部分についてホモ化することは現状では実質的に困難であり、残る育成系統でのジェノタイピングでは対象とするDNA領域をなるべくテロメア近傍に設定する対応をとる。昨年度までに育成が済んでいた系統が4系統であり今年度で9系統となった。残る18系統についても育成は進み来年度には完成される見通しである。 完成した系統のうち、第2、17、23、24染色体のコンソミック系統を用いて、栄養、幼若ホルモン、エクダイソン合成ホルモンに関連する遺伝子の発現解析を行った。解析数が少なく今後の追試実験が必要であるが、発現量に差が見られる遺伝子が見られた。繭の大きさ、幼虫の成長速度についても系統間で差が見られる系統も見出されたが、発育は餌となる桑の状況や飼育環境も影響するので今後多方面から分析を行う予定である。なお、本実験の基礎系統となるセミコンソミック系統に関して、育成過程と形質特性に関する結果をまとめた論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではクワコが保有する27本の染色体セットを染色体ごとにカイコ 染色体にパッケージすることを目標にしている。27の系統育成が目標となるが、そのうちの9系統が育成され、残る18系統も育成が進み、来年度には完成される見通しである。また、完成した系統を用いた形質調査、遺伝子発現の比較に関するデータ、分析方法についても予備調査が予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
未完成なコンソミック系統の構築を進める。コンソミック化が達成された系統から、フェノタイプの違いを評価する。カイコとクワコで異なる形質特性を中心に予定している。繭の大きさ、幼虫の成長速度については既に系統間で差が見られる系統も見出されているので、それらの系統では、関連すると予想される栄養代謝、脱皮・変態に関わる遺伝子群(幼若ホルモン、エクダイソン合成ホルモンに関連する遺伝子)の発現解析を行う。昨年度の結果で既に発現量に差がありそうな遺伝子が見出されているので、解析規模を拡大し確認していく。クワコとカイコ の形質差については、行動(匂いへの応答、脱皮時の行動、産卵時の行動、飛翔)が特に着目される。しかし、これらの差は単独のコンソミック系統の育成のみで解決されない可能性もある。既存、また進行中の研究成果情報を取り入れ、解析方法の確立も検討する予定である。
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