研究課題
本研究は,脊椎動物の中で最も遺伝的多様性が低く,生活史の多くが不明である“幻の魚”アカメについて,遺伝資源の保全・管理の根幹をなすパラメータである現在の有効集団サイズ(Ne)を明らかすることを目的とする。そのために,複数年級群からサンプリングされた当歳魚の血縁関係に基づく新たな遺伝的標識再捕法の理論を構築し,それに基づいてアカメが現在何個体いるのかを推定する。得られた結果に基づき,定量的採集が困難な海洋生物の保全に新たな道筋を示すとともに,国と県で異なる本種の保全策の統一に役立つ情報を得ることを目的とする。本年度は③アカメに最適なCKMR法の理論構築,④CKMR法による“現在の”Ne推定を行う計画であった。前年度までに,アカメの遺伝的多様性が極めて低く,RAD-Seq法では検出できるSNPs数が半同胞を推定する上で全く足りないことがわかり,次世代シークエンサー(NGS)を利用したジェノタイピング手法(Low-coverage whole genome resequencing,LWGS)に予算を集中することになった。また,当初計画していた宮崎県と高知県の2地点のうち,宮崎県のみの3年分の年級群を用いて解析することにした。予備実験の結果からLWGSの条件やSNPコールのフィルタリング条件を決定し,277個体から平均シーケンスデプス10X以上のLWGSデータを得て,約440万SNPsを得た。このデータに基づき血縁推定の条件を検討し,安定した結果が得られる条件で血縁推定を行ったところ,同一年級内および年級間で半同胞が検出されたのに対し,全同胞は同一年級内でのみ検出された。現在,年級間の半同胞推定結果に基づき,ベイズ推定によるCKMRの適用法の検討を進めており,直近のNe(2020年)が487個体(95%信頼区間:373-598個体)と推定されている。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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