研究課題/領域番号 |
20H03020
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
渡辺 洋一 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 特任助教 (30763651)
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研究分担者 |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (00250150)
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 教授 (60282315)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 化石DNA / マツ科針葉樹 / 古分布 / 最終氷期 / 次世代シークエンス |
研究実績の概要 |
本年度は、化石で球果が多産するマツ科ツガ属の亜寒帯性針葉樹コメツガを対象に化石からの遺伝実験を進めた。コメツガは現在では本州の亜高山を中心に分布するが、最終氷期にはより低標高に分布を下げ、西は九州南部まで分布を広げていたことが化石から確認されている。国内には同属の近縁種ツガも分布するが、現在はほぼ分布を棲み分けている。ただし、球果化石は必ずしも部位の欠失がなく同定がしやすい状態であるとは限らないため、DNA配列での種間・種内系統の識別を目指し葉緑体DNA(父性遺伝)およびミトコンドリアDNA(母性遺伝)について複数種で利用可能なPCRプライマーの設計および検証を行った。 特に化石由来のDNAは長期の埋没によりDNAの断片化や変性が生じているため、さらに150-200bpほどの短い配列を増幅し、かつその中に変異部位を含むする改変したPCRプライマーを設計し化石由来のDNAでの増幅・配列決定を進めた。その結果、葉緑体DNAの領域では化石由来のDNAでPCRを増幅を行い配列の決定ができた。葉緑体DNAの領域では現生のツガ属の種間で変異のあることが確認できていたが、化石(コメツガ)由来のDNAはコメツガであることが確認された。次いで、ミトコンドリアDNAの領域では化石由来のDNAでのPCR増幅は確認できたが、精度の高い配列を決定することができなかった。これはミトコンドリアDNAの多型領域に多くの挿入欠失型の変異が存在するため、もしくは未知の変異があるために増幅が安定しなかった可能性が考えられる。ミトコンドリアDNAの領域では種内系統を識別するような変異が現生個体で確認されていて有用だが、この化石由来のDNAでの検証はまだ終了していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験はほぼ完了できた。だが、その結果には幾分の難点がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた種内系統の識別を行うための実験結果は精細さを欠いているため、より改善が必要である。また、マツ科ツガ属コメツガでの研究だけでなく、マツ科カラマツ属カラマツでの研究もサンプル収集を行っており、本年度完了したため、次年度に実験を進める。
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