• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

長距離ジーンフローが卓越する針葉樹でなぜ高標高エコタイプが存在しうるのか?

研究課題

研究課題/領域番号 20H03021
研究機関東京大学

研究代表者

後藤 晋  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60323474)

研究分担者 北村 系子  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00343814)
内山 憲太郎  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40501937)
久本 洋子  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60586014)
津山 幾太郎  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80725648)
石塚 航  地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 研究主任 (80739508)
種子田 春彦  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90403112)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード中心辺境仮説 / 遺伝子流動 / 標高 / 繁殖個体密度 / トドマツ / UAV / 適応的遺伝子 / 人工交配
研究実績の概要

・十勝岳山麓の標高600m、900m、1200mの3標高域において、ドローンで撮影した樹冠画像を用いてトドマツの個体位置を特定し、それぞれから繁殖している可能性のある個体(成木)をサンプリングした。2011年豊作年に採種した個体のUAV樹冠図と個体サイズの関係から、繁殖を開始する個体の樹冠面積が10平方メートル程度であることを明らかにした。各標高域でサンプリングを行う際に繁殖の有無を調査し、標高によって繁殖開始サイズが異なるかどうかを検討した結果、1200mの高標高域では、樹冠が小さい個体でも繁殖していることが示された。
・採取した成木集団のサンプルと苗畑で育成中の各標高域に由来する実生集団のサンプルからDNAを抽出し、8座のジェノミックSSRマーカーでタイピングし、成木集団と実生集団の遺伝子組成を比較した。標高別母樹の花粉プールの遺伝的異質性について解析した結果、1200m集団の花粉プールは600m集団や900m集団のそれとは明らかに異なる組成であることが判明した。また、900mの実生集団の一部に1200m集団と同じ遺伝クラスタ―が混入しており、中心辺境仮説とは逆の遺伝子流動が生じている可能性が示唆された。
・高標高×低標高の分離集団を用いて生理形態形質に関してQTL解析を行い、9つの生理形態形質について有意なQTLを検出した。また、前述した十勝岳の3標高域において24個体の成木サンプルからRNAを抽出し、遺伝子発現解析を行った結果、47,238の遺伝子座のうち413座がアウトライアーとして検出された。
・高標高と低標高の人工交配家系を用いて針葉・枝の形態学的特性について調査した結果、高標高と低標高の交配家系では多くの場合、中間型の形質を示すことが明らかになった。これらの形質に関して、ゲノムワイド関連解析を行った結果、多くの形態形質と関連する遺伝変異が検出された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

・十勝岳については、600、900、1200mのサイトから繁殖個体をランダムにサンプリングして、十分な個体数で集団遺伝学的な解析ができ、1200mのみが遺伝的に明らかに異なっていることを示すことができた。一方、当初の計画ではトドマツの分布中心である600m付近から遺伝子が1200mへと流入しているのではないかと想定していたが、むしろ1200mの遺伝クラスタ―の一部が900m由来の実生集団で見られており、どのような遺伝子流動が生じているのか興味深い知見が得られている。
・十勝岳の3標高域からのサンプリングと繁殖調査から、高標高域では小さい個体サイズでも繁殖を開始しているという興味深い知見が得られた。

今後の研究の推進方策

・芦別岳について、十勝岳と同様に3標高域でドローンを用いて繁殖個体密度の推定を試みる。大麓山の標高別産地試験林を利用して、繁殖量の由来標高による違いを検討する。
・十勝岳の1200mの集団が遺伝的に異なる理由として、開花時期が違いがあるのではないかという仮説を立てて、開花時期に1週間に2回程度の現地観察を行うことでこの仮説を検証する。また、標高による開花時期の違いについて、既存の研究を再解析し、その成果を論文化する。
・トドマツでは基礎生物研究所との共同研究でドラフトゲノムの原型ともいうべき超ロングリードのシーケンス情報が収集されつつあり、これをリファレンスに使うことで遺伝子のアノテーションの精度を向上させる。
・標高別の遺伝子発現解析から、標高適応に関する遺伝子内で生じている遺伝変異を検出する。また、標高間で発現が変動する遺伝子を検出し、その機能推定を試みる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Local adaptation to contrasting climatic conditions in Sakhalin fir ( <i>Abies sachalinensis</i> ) revealed by long‐term provenance trials2021

    • 著者名/発表者名
      Ishizuka Wataru、Kon Hirokazu、Kita Kazuhito、Kuromaru Makoto、Goto Susumu
    • 雑誌名

      Ecological Research

      巻: 36 ページ: 720~732

    • DOI

      10.1111/1440-1703.12232

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genetic Dissection of Growth and Eco-Physiological Traits Associated with Altitudinal Adaptation in Sakhalin Fir (Abies sachalinensis) Based on QTL Mapping2021

    • 著者名/発表者名
      Goto Susumu、Mori Hideki、Uchiyama Kentaro、Ishizuka Wataru、Taneda Haruhiko、Kono Masaru、Kajiya-Kanegae Hiromi、Iwata Hiroyoshi
    • 雑誌名

      Genes

      巻: 12 ページ: 1110~1110

    • DOI

      10.3390/genes12081110

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本の森林樹木の地理的遺伝構造(31)トドマツ(マツ科モミ属)2021

    • 著者名/発表者名
      北村系子・石塚 航・後藤 晋
    • 雑誌名

      森林遺伝育種

      巻: 10 ページ: 44-48

  • [雑誌論文] Ten Years of Provenance Trials and Application of Multivariate Random Forests Predicted the Most Preferable Seed Source for Silviculture of Abies sachalinensis in Hokkaido, Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Tsuyama Ikutaro、Ishizuka Wataru、Kitamura Keiko、Taneda Haruhiko、Goto Susumu
    • 雑誌名

      Forests

      巻: 11 ページ: 1058~1058

    • DOI

      10.3390/f11101058

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 長期測定データから気候変動が北方針葉樹3種の苗木の生存と成長に及ぼす影響を考える.2022

    • 著者名/発表者名
      後藤 晋・小川 瞳・福岡 哲・木村徳志・田中延亮・福井 大:
    • 学会等名
      第133回日本森林学会大会
  • [学会発表] 気候変動の時代における林木育種:今だからやれること、やるべきこと2021

    • 著者名/発表者名
      後藤 晋:
    • 学会等名
      第132回日本森林学会大会
    • 招待講演
  • [図書] 樹木医学入門2021

    • 著者名/発表者名
      福田 健二
    • 総ページ数
      210
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      978-4254470598
  • [備考] 後藤晋web

    • URL

      http://www.gotos-web.sakura.ne.jp/

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi