研究課題/領域番号 |
20H03022
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丹下 健 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20179922)
|
研究分担者 |
草野 都 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60415148)
田野井 慶太朗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90361576)
金 鍾明 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (90415141)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 乾燥耐性発現機構 / 酢酸施用 / スギ |
研究実績の概要 |
根への酢酸施用に対するスギ苗の応答を明らかにする栽培実験を行った。1年生スギコンテナ苗を材料として、根に酢酸溶液を施用し、潅水停止によって乾燥ストレスをかけた場合に、水を施用して潅水停止した場合に比べて萎凋や枯死の発生が遅れることを明らかにした。酢酸溶液施用後20分程度で蒸散速度が低下すること、蒸散速度の低下は根の通水抵抗が増大することによって生じていること、根系を切除し茎から直接、酢酸溶液を吸収させた場合、蒸散速度は低下せず、純光合成速度が低下することを明らかにした。培地の水は根の細胞膜のアクアポリンを通過して植物体内に取り込まれること、葉に到達した水の大半は細胞内を通過せずに蒸散されるのに対して、気孔を介して取り込まれた二酸化炭素は葉肉細胞の細胞膜のアクアポリンを介して細胞内に取り込まれることから、酢酸がアクアポリンの機能を低下させることが示唆された。酢酸がアクアポリンの膜輸送機能に関わる遺伝子発現に与える影響を調べる予定である。放射性炭素で標識した酢酸を根から吸収させて酢酸の吸収・移動・集積過程を調べた結果、地上部頂端の成長点に酢酸を構成する炭素が集積することが明らかになった。酢酸溶液施用に伴う乾燥耐性の誘導に関わる遺伝子発現や代謝物解析を行うための実験条件を概ね確立することができた。今後、根から吸収された酢酸がどのように代謝され、地上部成長点でどのような化合物として蓄積し、遺伝子発現に関与するのかについて詳細に調べる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって所属機関における研究活動が一部制限されたことにより、実験等が計画通りには進んでいないが、酢酸施用に対するスギの乾燥耐性に関わる応答については概ね明らかにでき、また遺伝子発現解析や代謝物解析の実験条件も概ね確立できたことから、今後の研究における基盤は確立されたと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究よって、酢酸がアクアポリンの膜輸送機能を阻害する可能性が示されたことから、それに関わる遺伝子発現などを詳細に調べる予定である。これまでは、培地の急激な乾燥に対する応答を調べてきた。今後は、緩やかな乾燥ストレスの増大に対する乾燥耐性の発現機構を、遺伝子発現と代謝物解析によって明らかにする実験を進める予定である。
|