研究課題/領域番号 |
20H03023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 徹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10598775)
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研究分担者 |
光田 靖 宮崎大学, 農学部, 教授 (30414494)
長島 啓子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40582987)
中澤 昌彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90455262)
北原 文章 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50582748)
斎藤 仁志 岩手大学, 農学部, 准教授 (60637130)
瀧 誠志郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70714103)
當山 啓介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00613001)
城田 徹央 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10374711)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工林 / 広葉樹 / 森林施業 / 経済性 / 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究の実績の概要は、以下のようになる。 0.基礎情報の整理 人工林に対する侵入木の樹種ごとの試験地データ等の整理、レーザーデータ等整理を行った。また、埼玉、千葉、長野、三重、宮崎などの研究候補地の有している過去の計測履歴や試験地の基礎情報について比較した。本研究では,伐採方法や生物多様性回復に対する戦略の違い,伐採圧の地域性などを考慮し,人工林主伐後の広葉樹誘導(宮崎県綾市国有林・長野県信濃町国有林等),有用樹種に着目した広葉樹林誘導(三重県旧宮川村),不成績造林地への広葉樹侵入(埼玉県秩父市),人工林伐採後の広葉樹侵入(千葉県鴨川市)等を調査候補地とする。伐出や路網開設をはじめとした人為の伴う経済性評価や,林床に侵入した広葉樹の種や林分構造の多様性評価には,上木から下木にかけた三次元構造の把握が必要である。そこで,一部の試験区を中心に UAV(小型無人航空機),TLS(地上レーザースキャナー)等の三次元計測を実施した。 1.広葉樹林化はどこまで可能なのか ①すでに広葉樹林化されている領域,②人工林から広葉樹林化への転換が可能な領域,③人工林から広葉樹林化への転換が困難な領域を、人工林と広葉樹の樹高成長データ等から50mメッシュ単位で推定した。最終的に5,000ha程度に推定を拡げることも検討することとする。 2.広葉樹林化で生物多様性は回復できるか ①から③の類型ごとに、侵入木の樹種別データから生物多様性を分析した。参考情報として、埼玉県の原生林における長期試験地の生物多様性分析を行った。 3. 広葉樹林化でどれくらい追加コストがかかるのか? 広葉樹林化施業における追加コストを、広葉樹林化施業の文献調査結果などをもとに推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、分担者間での合同による宿泊を伴った現地調査が困難な状態にあるが、比較的データの整った対象地において、基礎情報の整理、広葉樹林化の可能性、広葉樹林化で生物多様性は回復の可能性、広葉樹林化に要する追加コストについては検討を進めているため、当初計画された研究事項は、進められている。
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今後の研究の推進方策 |
3-2 広葉樹林化で施業のための林道開設における 追加コスト人工林林床への広葉樹侵入を促進する伐開・林道開設手法を開発する。具体的には,人工林として循環させる場合よりも広葉樹林化に配慮した路網整備により得られる経済的便益が減少することを考慮し、適切な路網のあり方(路網密度、規格等)を検討する。生物多様性への影響は,個別林分内の路網配置で、どのように林床光環境が変化し、どのようにコストが変わるのかを含めて評価する。なお,伐区・路網からの距離等に応じたエッジ効果によって変化する林床光環境は,林内および林外の照度計測,地上 LiDAR 計測による林分の三次元構造などから推定する。以上を踏まえ,個別林分を対象に,作業道の配置を複数設定し,路網計画に応じた林床光環境への影響を調べる。林床光環境を説明変数とする広葉樹侵入は,後述するこれまでの研究実績でモデル化されつつあり,これら成果や 3-1.の更新伐コスト等とを組み合わせることで,生物多様性に資する路網配置とそれに伴う路網開設費,維持費等の経済的損失も検討する。同時に,生物多様性の向上を前提に,コスト低減にも寄与し得る伐開・林道開設手法も模索する。対象地における生物多様性回復と経済性の多目的最適やシナリオ設定によるシミュレーション等によって,両者のトレードオフを考慮した広葉樹林化適地を抽出する。そのうえで,例えば幹線作業道および林業専用道について、コスト削減を優先した配置と,潜在植生タイプに配慮した場合等の複数の森林管理シナリオを設定し,広葉樹導入のための路網配置や伐採条件を制約として組み込んだ最適化問題の解の比較を通し,生物多様性・経済性両面の合理性を踏まえた広葉樹林化手法や林業の戦略の在り方を提言する。
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備考 |
森林・環境共生学コース4年田中来実氏が第11回中部森林学会大会において学生発表奨励賞を受賞 https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/news/2021/12/-411.php
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