研究課題/領域番号 |
20H03024
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上村 佳奈 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (40570982)
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研究分担者 |
勝島 隆史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00611922)
谷川 東子 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10353765)
南光 一樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40588951)
平野 恭弘 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60353827)
石川 仁 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (90311521)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 風害 / 木の振動 / 根系 / 雨量 |
研究実績の概要 |
近年、大型台風などによる甚大な森林被害は国内外で毎年報告されている。しかし、森林内の立木がどのように破壊(倒伏や幹折れなど)されるのか、そのメカニズムは解明されていない。本研究では、立木の地上部複数箇所、根、根周辺の土壌の振動と変位、及び降雨・風速・風向を同時観測することで、立木が倒伏する動的メカニズムの解明とモデル化を目的とする。 2020年度に森林総合研究所千代田試験地(茨城県かすみがうら市)内のスギ5本を含んだプロットを設置し、観測を開始した。2021年度は観測を継続した。具体的には、約150個のセンサーと観測機器により、樹幹および根のひずみ、土壌の移動、土壌の含水率、樹幹流、雨量、風向風速を常時計測している状態である。 2021年10月には、樹幹と根のひずみ値を回転モーメント等に変換するパラメタを取得するため、各対象木を8方向に引っ張る試験を実施した。本試験では、樹間の高さ3mの位置にワイヤーを設置し、手動ウィンチでワイヤーを引っ張る時に、ロードセルで引っ張り力を、傾斜計で幹の傾きを計測しながら、すでに設置してあるセンサーで木の各部位のひずみを計測した。樹幹上部の力と根の反応を解析した結果、樹幹に近い根では、樹幹の傾きに応じて蝶番のような力が発生するが、根から50cm以上離れている根では多様な反応を示した。これは、根に連結している細根や根の伸びる方向がひずみに強く影響しているためと考える。今後も観測や試験を継続し、樹幹や根の長期的な力学的反応も解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部のセンサーからデータが取得できない状態になったが、プログラム内のパラメタ等を変更して問題が解決し、データ収集を継続できている。一方、プロット内に設置した超音波風速計用のマストについて、高さを維持できないトラブルが発生した。本風速計については当初に計画しておらず、前年度に追加で設置したものであるため、観測計画そのものには影響しないが、代替のマストを2022年度に設置する予定である。また、タワーに設置した超音波風速計が10月に故障し、データ収集ができなくなった。本超音波風速計についてはメーカーへ修理を依頼し、代替としてマストに設置してあった超音波風速計を、改めてタワーに設置した。そのため、風速観測については、ほぼ継続して実施できている。 コロナ禍の影響で対面での検討会が実施できず、2021年12月にオンラインでの打ち合わせを実施した。取得データの問題点や改善点、今後の予定等の話し合いが十分にできた。これらのことから、現在までの進捗状況として2)おおむね順調に進展している、を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度についても観測を継続する。また、木の成長が止まる10月頃に、歪みゲージから取得したひずみ値を回転モーメントに換算するための引っ張り試験を再度実施する。多様な気象条件でのデータが蓄積されてきたので、気象条件ごとの樹幹、根のひずみ状態を解析し、国際学会(International Conference of Wind and Trees など)や学術雑誌に発表する。木の地上・地下部を統合した振動モデルの構築を開始する。
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