研究課題/領域番号 |
20H03027
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
戸丸 信弘 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50241774)
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研究分担者 |
鳥丸 猛 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10546427)
内山 憲太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40501937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一塩基多型 / RAD-seq / ドラフトゲノム / 遺伝的多様性 / 集団構造 / 適応 / 環境勾配 |
研究実績の概要 |
以下の研究成果が得られた。 (1)ブナのドラフトゲノムの作成 ゲノム配列の精緻化と配列長の拡張を目的として、既存のブナのドラフトゲノムに対してオプティカルマッピングとBionano access、およびOmni-CとHiRiseによるハイブリッドスキャホールディングを実施し、最後にフリーソフトLR_Gapcloserにてgap closingを行った。その結果、アセンブリサイズは約699Mbp、スキャホールド数は19本、スキャホールドN50は約78.1Mbp、BUSCO解析におけるコア遺伝子セットの95.7%(Single:87.4%, Double:8.3%)を網羅する配列が得られた。一方、Gapサイズが総塩基配列長の18.5%(約129Mbp)となり、類似した反復配列領域同士を誤って連結した可能性があり、引き続きアセンブリ解析を最適化する必要が考えられた。 (2)ブナの集団構造の解明および適応進化に関わる遺伝子の探索 分布域全体から選定した24集団の合計384個体を用いて、ddRADシーケンシングを行い、4604座のSNPが得られた。それらの中から、マーカー間の距離を考慮して選んだ1741座を用いて解析を行い、集団構造のパターンを明らかにした。次ぎに全座のデータを用い、中立進化からの逸脱や生育地間の環境変異との相関について解析する3種類のプログラムを用いて適応的遺伝子の探索を行ったところ6座が有意であった。6座の両端1000bpの塩基配列を抽出しNCBIデータベースに対してblast検索を行って近傍に存在する候補遺伝子を探索し、さらに文献調査からその機能を推定した。その結果、乾燥などのストレス耐性に関与する遺伝子などが複数検出された。また、アレル頻度の地理的パターンは気候勾配と関連していた。したがって、これら6座は適応進化に関わる遺伝子の有力な候補であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドラフトゲノムの作成において完全ではないもののリファイレンスゲノム配列を取得して、集団ゲノミクス解析を効果的に行うことができた。その結果、集団構造が解明され、適応進化に関わる遺伝子の有力な候補を6座検出することができた。したがって、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ドラフトゲノムの作成においては、アセンブル解析を最適化させることによって最終的なゲノム配列を取得するとともに、遺伝子機能のアノテーションを行い、ドラフトゲノムを完成させる。また、集団ゲノミクス解析では、今回得られたデータを用いてコアレッセント理論に基づき集団の歴史を推定する。さらにゲノムワイド関連解析を行い、適応的遺伝子の探索を行う。
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