研究課題
令和2年度にブナが大量開花した茨城県の小川群落保護林において、交配実験によって結実した種子を対象としてマイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型を決定した。これらの遺伝的多様性を評価するためにヘテロ接合度期待値(HE)を算出した結果、その数値は日本海側のブナ集団で得られた値と同程度であり、小川群落保護林のブナは種子集団においても高い遺伝的多様性が保たれていることが分かった。また、遺伝子型が決定できた種子ブナ集団について、花粉親を推定した結果、小川群落保護林のブナにおいて近親交配が進行しているという証拠は得られなかった。令和3年度は太平洋型のブナ調査地4カ所はいずれもブナが不作年で開花がほとんど見られなかったため、小川群落保護林のブナ7個体で2000年から2020年まで継続して得られたリタートラップのデータを解析し、太平洋型ブナの年ごとの結実率や種子の食害率などを詳細に調べた。その結果、小川群落保護林のブナは2000年以降、大量に開花する年はあるものの、ほぼ全ての種子がシイナか虫害の被害を受けており、充実種子はほとんど見られないことが明らかになった。また、小川群落保護林では、ブナを含め大径木個体の倒木が目立つため、ブナの腐朽状況やその要因について調査を行った。太平洋側2地点及び日本海側2地点の計4地点で採取したブナの木部コア試料について、年輪解析および炭素安定同位体比の分析を引き続き行っている。過去50年間の相対成長速度や水利用効率の経時変化の地理間差異に関するデータが蓄積されてきている。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度が設定した調査地の大半でブナの大量開花がみられたため、令和3年度はほとんど開花がみられないことは事前に想定されていた。令和4年度の開花に備え、令和3年度はこれまでに得られた試料の解析に注力し、結果を得ることが出来た。
令和3年度はこれまでに調査した以外の調査地において、ブナの大量開花が見込まれているため、集中的に操作実験や遺伝的多様性解析などに取り組んでいく予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Methods in Ecology and Evolution
巻: 13 ページ: 1135~1147
10.1111/2041-210X.13823
Forests
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