研究課題/領域番号 |
20H03034
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
鵜川 信 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (30582738)
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研究分担者 |
稲垣 善之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00353590)
福澤 加里部 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10456824)
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60390712)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 窒素獲得戦略 / 共生タイプ / 窒素形態 / 窒素安定同位体 / プロセスモデル |
研究実績の概要 |
同所的に共存するすべての樹種の窒素獲得戦略を3つの視点(根と微生物の共生タイプ、窒素を吸収する土壌の深さ、窒素を吸収する際の窒素形態)から類別化し、これを反映させた窒素循環プロセスモデルを構築しシミュレートすることで、各種環境変動に対する森林生態系の窒素吸収機能の脆弱性(機能低下のリスクとプロセス)を評価することを目的とする。令和2年度の研究計画では以下の(A)の項目を進める予定であり、鹿児島大学高隈演習林(暖温帯常緑広葉樹林)と北海道大学中川研究林(冷温帯針広混交林)において一定の進展を得た。加えて、(B)の項目についても研究に着手した。 (A)根の樹種識別手法および15Nトレーサー注入方法の検証:根の樹種識別手法の検証では、対象とする天然林において表層の細根量の予備的測定を行い、トレーサー試験を実施可能なサンプル量が明らかとなった。各種細根の採取については、森林の樹種組成を確定する必要があったため、以下の(B)のとおり調査区の設置を先行した。15Nトレーサーの適用手法の検討では、塩ビパイプを用いて深さ30cmの土壌に着色水を注入する試験を実施し、注入が完了する時間が比較的長く(約3時間)、かつ、予想よりも水平方向の拡散範囲が小さいことを確認した。 (B)15Nトレーサー実験による多種樹木の窒素獲得戦略の解明および類別化:(A)の研究(各樹種の細根の特徴抽出)を実施するために、調査区の設置とその中の樹種組成の調査を先行して実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で、出張に一定の制限があり、調査地での作業に遅れが生じた。15Nトレーサー注入方法の検証は所属機関の敷地内での試行研究を実施できたが、根の樹種識別手法の検証では、調査地での調査時間が一定量確保できず、作業を思うように進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
以下の各項目について、当初の予定通り研究を推進する。これにあたり、(A)の項目では、根の樹種識別手法の検証に注力し、作業の遅れを取り戻す。 (A)根の樹種識別手法および15Nトレーサー注入方法の検証:根の樹種識別手法の検証では、各樹種の細根を採取し、細根の形態観察とDNA情報の確認・整理を行う。15Nトレーサー注入方法の検証では、深層に注入した着色水の拡散範囲を明らかにする。 (B) 15Nトレーサー実験による多種樹木の窒素獲得戦略の解明および類別化:対象の森林に設置した調査区において、(A)で検証された手法を用いて、15Nトレーサー実験を行う。15Nトレーサー溶液の注入を行い、注入前のサンプリングを含め、経時的なサンプリング(生葉、根、リター、土壌)を実施する。これらのサンプルについて、窒素安定同位体の測定を行い、その分析データから、15Nトレーサーの動態を明らかにする。
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