研究課題/領域番号 |
20H03039
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
清水 貴範 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353726)
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研究分担者 |
壁谷 直記 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353651)
熊谷 朝臣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50304770)
植山 雅仁 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (60508373)
飯田 真一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70375434)
宮沢 良行 九州大学, キャンパス計画室, 学術推進専門員 (80467943)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱帯季節林 / 観測タワー / カンボジア王国 / 水利用効率 / 植物季節 / スギ・ヒノキ林 / オゾン耐性 |
研究実績の概要 |
カンボジア王国の低地乾燥常緑林を対象に、二酸化炭素フラックスおよびオゾン濃度の測定機器を設置し、観測を開始した。その後、誘導雷による電源制御機器の損壊によってデータ取得作業は仕切り直しを余儀なくされたが、再度の渡航時に電源制御機器の交換作業を行い、連続的にデータ取得が可能な体制を整備した。また、これまでに蓄積してきたデータから、乾燥常緑林生態系の蒸発散量と二酸化炭素収支を年間ベースで定量化した。その結果、生態系の年蒸発散量は約1400mm、年間のNEEは約100tC/haと推定された。また、取得した水蒸気・二酸化炭素フラックス値に基づいて日中の生態系の水利用効率の値を算出し、この値の季節変動を旬ごとに得られているリター量の観測値と比較したところ、両者は同期して乾季の序盤に上昇することが判明した。これは、落葉せずに残存した葉と落葉直後に生じる展葉による新葉が、雨季直後の豊富な土壌水分を利用して、高い水利用効率で盛んに光合成を行うことを示唆していると考えられた。 国内のスギ・ヒノキ人工林樹冠上では、二酸化炭素フラックス観測と同期してオゾン濃度機器の精度確認のための観測を実施してきた。これらの値を合わせて解析したところ、スギ・ヒノキ林では晩冬から早春の時期にオゾン濃度が高くなると、日中の二酸化炭素フラックスが若干減少する傾向があることが見いだされるとともに、季節の経過に伴ってその傾向は解消されることが判明した。このことにより、オゾン耐性が比較的高いとされているスギやヒノキを主体とする森林でも、時期によってはオゾン濃度の上昇に反応して光合成能が減退する可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による渡航要件の厳格化で課題開始後2年間、カンボジア王国への渡航が出来ず、再渡航時に観測タワーの損壊が判明して機器の設置が著しく遅れたことに加えて、その後に電源制御機器の損壊が生じ、熱帯季節林での連続的な観測データの取得に手間取っているため。
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今後の研究の推進方策 |
カンボジア王国の乾燥常緑林を対象に、微気象・水文観測を継続的に実施するとともに、観測機器を再度整備して改めて水利用効率の観測とオゾン濃度変動との関係性を把握するためのデータ取得と比較解析を実施する。現地周辺は土地利用改変によって森林の範囲が狭まっており、スーパーエルニーニョ以降は倒木も相次いでいることから、大気環境の変化とともに周辺状態の変化による水利用効率の変化を比較・追跡するためのデータを取得する。国内のスギ・ヒノキ人工林でも取得データを基にした解析をさらに進め、熱帯林との水利用効率特性の比較を実施する。
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