細胞壁二次壁の肥厚つまり成分堆積における日周生がどのように細胞壁の微細構造に影響を及ぼすのか、とくにセルロースミクロフィブリルの凝集・束形成に寄与しているのか、さらにその微細構造が細胞壁の物性発現にどう関わるのかを明らかにするため研究に取り組んだ。 (1)人工気象器で針葉樹苗木を明暗周期を制御して生育し、明期が長い条件で形成された細胞壁試料と暗期が長い条件で形成された細胞壁試料を作成した。また、明暗期間の比は等しいが周期が異なる条件で形成された細胞壁試料を作成した。(2)その試料の解析のため、プローブ顕微鏡ー光学顕微鏡ー電子顕微鏡の3つの顕微鏡画像の相関顕微鏡法の確立を目指した。従来法の電子顕微鏡は試料に金属蒸着が必要であるが、これが相関顕微鏡法の障害となるため、金属蒸着なしでの電子顕微鏡観察技法を探り、セルロースミクロフィブリルの認識に必要な観察倍率での無蒸着観察ができるようになった。 (3)プローブ顕微鏡で細胞壁のセルロースミクロフィブリル束の横断面サイズを計測して、次を明らかにした。明期が長い条件ではセルロースミクロフィブルリ束が大きなものが斑状に分布していた。暗期が長い条件ではセルロースミクロフィブリル束はおおよそ均一であり、細胞壁成分堆積と思われる同心円様の層状構造が見られた。明暗比が等しく周期が違う条件では、セルロースミクロフィブリル束のサイズや分布に明確な違いは認められない。
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