研究課題/領域番号 |
20H03044
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
|
研究分担者 |
梅澤 俊明 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80151926)
今井 友也 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (90509142)
久住 亮介 京都大学, 農学研究科, 助教 (70546530)
堀 千明 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50722948)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | リグニン / 細胞壁 / リグノセルロース |
研究実績の概要 |
複雑多様なリグニンの分子構造は、維管束植物の進化・環境適応と密接に関係する木質 細胞壁の本質的特徴であると同時に、脱炭素社会構築 を担う木質バイオマス利用の重要阻害要因でもある。しかしながら、リグニンの分子構造と木質細胞壁の生理機能・超分子構造 ・ 各種バイオマス利用特性の関係性の理解は未だ著しく欠落しているのが現状である。本研究では、木質の生理学的機能・超分子構造・利用特性に及ぼすリグニンの寄与を体系的に明らかにすることを目的とし、リグニンの量・構造を系統的に変化させたリグニン改変組換え植物を作出し、その細胞壁の化学構造・超分子構造・生理学的特性・化学変換利用特性を体系的に調べ、改変されたリグニンの量・構造との関 係性を明らかにする。同時に、代謝工学的に制御したリグニンの反応特性に合わせた木質の成分分離・触媒分解反応の最適化を通じ、木質化学変換利用効率の相乗的向上を図る。令和2年度は、リグニンを改変した幾つかの新たなゲノム編集イネの作出に成功し、その細胞壁の化学構造の詳細を各種化学分析や2D NMR解析により明らかにした。過去に作出したリグニン改変組換えイネと共に、一部のイネ株については、固体NMR法及び広角X線法(WAXD)による細胞壁超分子構造の解析も行い、リグニンの量的・質的改変が細胞壁多糖の集合状態に影響することを実験的に証明した。さらに詳細な細胞壁超分子構造の解析を目的に、狭角X線法(SAXS)を用いた細胞壁中における多糖およびリグニンの混合状態の解析のための予備実験も行った。また、種々の植物種におけるリグニン生合成機構の解明、代謝工学、生物分解等を目的とする共同研究において、リグニン構造解析やイメージング解析の実験も行った。これらの成果の一部を纏め、論文発表及び学会発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に、多数のリグニン改変ゲノム編集イネ(4CL、C4H、ALDH、各種トリシン生合成酵素ノックアウトイネ)の作出に成功し、過去に作出したリグニン改変組換えイネと共に、細胞壁の化学構造及び超分子構造の解析を進めることができた。さらに、狭角X線法(SAXS)を用いた細胞壁超分子構造をさらに詳しく解析するための予備実験も行うことができた。また、種々の植物種におけるリグニン生合成機構の解明、代謝工学、生物分解等を目的とする共同研究において、リグニン構造解析やイメージング解析の実験で貢献し、複数の論文発表にも寄与した。以上のことから、本課題は、当初の計画以上に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、昨年度までに作成したリグニン改変イネ株の特性解析を進めるとともに、新たな組換えイネ株の作成も行う。本年度は、引き続き、X線及び固体NMR法を用いた細胞壁の超分子構造の評価を中心に、リグニン改変イネ株の特性解析を進める。一方、新たなリグニン改変イネ株の作出も引き続き進める。既に、イネ科植物特異的なリグニン修飾構造の形成に寄与する 複数の酵素遺伝子をノックアウトした新規な多重変異株の作成に着手しており、本年度はそれらのホモ変異株を単離し、細胞壁構造の詳細評価 を行う予定である。
|