研究課題
福島県の海面・内水面漁業は、原発事故から10年が経過した現在においても、水産生物の放射性セシウム(Cs)汚染の影響により、一部水域における操業の制限を余儀なくされている。本研究の目的は、原発周辺も含め、福島県の海面および内水面に生息する魚類の生態特性に応じたCs 汚染実態の解明を目指すともに、本研究の成果を国内外に公表し、風評被害の払拭など、科学的根拠に基づく福島県の漁業再生に資することである。令和2年度は、水産生物(海面・内水面)のCs汚染状況や漁業の復興状況について、学会活動や地域活動等を通じて積極的に発信した。具体的には、日本水産学会理事会特別シンポジウム「東日本大震災の教訓:10年後の現状と地域社会の将来」等で発表した。また、福島県漁業協同組合連合会が運営する地域漁業復興協議会に委員として参加し、福島第一原発や周辺環境の状況把握に努めるとともに、海域における操業拡大化や好適な販売手法の確立に向けた討議に加わった。また、調査結果として、海面では、海産魚類のCs濃度が低い実態を明らかにするとともに、福島県の重要魚種であるホシガレイ等のバイオロギング調査を行い、魚種ごとの移動範囲や季節ごとの行動特性を明らかにした。一方、内水面では、原発周辺地域の河川・湖沼域や貯水池に生息する魚類(ヤマメ、イワナ、コイ、フナ類、ウナギ等)の調査を行い、これらの魚種のCs濃度が海水魚に比べて依然として高く、餌を介したCsの取込みの継続により、Cs濃度の低下が遅い実態を明らかにした。また、コイおよびギンブナの飼育試験を行い、Csの取込・排出に関わるパラメータを取得した。得られた成果の一部については、国際誌等を通じて公表した。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度は、水産生物のCs汚染状況ならびに漁業の復興状況について、学会発表や講演会等を通じて研究者や一般市民に向けて積極的に発信した。また、福島県唯一の汽水性潟湖である松川浦に生息するニホンウナギの行動生態や、ウグイのCs取込・排出速度の飼育試験による評価、原発周辺のため池におけるCsの挙動に関する論文等を、学術誌を通じて公表した。以上のように、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
本研究は順調に進展している。今後も、分担者や共同研究者と研究課題を推進するとともに、研究成果について、地元の漁業関係者や一般市民等に向け、積極的に発信していく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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