研究課題/領域番号 |
20H03058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 直樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30502736)
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研究分担者 |
良永 知義 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20345185)
金森 誠 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部 函館水産試験場, 主査 (40584149)
三坂 尚行 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部 栽培水産試験場, 研究主幹 (90442657)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホタテガイ / Francisella halioticida / 感染症 / 細菌 / 二枚貝養殖 |
研究実績の概要 |
ホタテガイは輸出も積極的に行われるなど国内水産業を牽引しているが、生産過程における死亡がしばしば発生しており、安定生産が課題である。死亡要因として波浪や餌環境、水温といった養殖海域環境のほか、細菌症であるフランシセラ感染症によるものも看過できない。そこで本研究ではこの新興感染症に関する基盤的知見を収集し、総合的対策を立案することを目的とした。 研究年度1年目である令和2年度は、北海道南部海域の西部と東部の養殖場を対象とし、中間育成中の種苗と耳吊法にて本養成している成貝を採取し、1年間を通じたフランシセラ感染症の疫学調査を実施した。中間育成中の種苗を対象にした調査では9月から保菌が確認され、水温低下に伴い保菌率は上昇し、その後低下した。また、貝殻に異常を呈する個体や死亡個体が増加する群では保菌率が高くなる傾向が捉えられた。一方、本養成中の成貝では、両海域とも9月ごろまで保菌率は低かったが、西部では10月から12月まで、東部では1月と水温低下期に保菌率の上昇が見られた。また調査終了時の3月時点での成貝における生残率は、西部では60%、東部では80%程度であった。 また稚貝の中間育成時に生息密度の調整作業(分散作業)を実施するが、作業実施時期や調整密度が生残や本感染症に影響する可能性がある。そこで、作業実施時期や調整密度の条件を影響を評価する中間育成試験を実施したところ、分散作業を早期に実施した区や飼育密度を低下させた区では、保菌率が低下し、生残率が向上した。 さらに、PCR法による診断は労力を有するため、簡便な診断法開発が求められている。そこで抗F. halioticida血清を使用した診断法の開発を目指し、血清を試験的に作成、免疫染色でその有用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究年度1年目に予定してた項目のうち、種苗移動による拡散可能性、疫学調査、フランシセラ菌検出法についてほぼ予定通り達成した。また2年目に予定していた改良養殖法の開発と簡易検出法開発については、予定を繰り上げて実施することができ、一定の成果を得た点では当初計画以上の進展と判断できる。一方、他の貝類に対する感受性試験や国内における浸潤調査、飼育試験にて実施予定であった項目については、コロナによる活動制限の影響などで十分に実施できていない。そのため、全体としては予定通りの進捗と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究年度2年目は引き続き疫学調査を実施し、ホタテガイ養殖場における影響の調査を明らかにしていく。中間育成時に実施する分散作業の影響については有益な情報が得られたが、今年度だけの現象である可能性もあるため、2年目も引き続き実施することにする。国内における当該細菌の浸潤調査は、生産海域での協力者が欠かせないため、引き続き情報収集を進め、協力者が得られ次第、調査を実施する。水槽内での飼育が必須な項目については、活動制限が解除され次第の実施を検討するが、もし困難である場合、代替となる研究方法を検討する。簡便な検出法開発については、予定通り実施していく。
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