研究実績の概要 |
これまでの研究で、免疫関連遺伝子:インターロイキン1beta (IL-1b)、CCケモカイン (CCL2), リゾチームC (LYZ-C)およびToll様受容体(TLR)-9の発現には、概日リズムが備わっていることを明らかにした。そこで、当該リズムの発振機構を探るために、各遺伝子の転写調節領域に時計遺伝子応答配列(E-Box, RORE)が存在するかを確認した。その結果、全ての遺伝子にE-BoxおよびRORE配列が複数認められ、時計遺伝子による転写制御を受けていることが示唆された。続いて、時計遺伝子(Bmal1/Clock1, ROR)過剰発現細胞を作製し、上記遺伝子の発現が変調するかを調べたところ、Bmal1/Clock1過剰発現細胞においてIL-1b, LYZ-CおよびTLR9遺伝子の有意な発現増加が認められた。また、ROR過剰発現細胞においてCCL2遺伝子の発現が有意に増加した。続いて、モルフォリノオリゴを用いて時計遺伝子の発現を抑制した細胞(KD細胞)における、IL-1b(Bmal1-KD細胞)およびCCL2(ROR-KD細胞)遺伝子の発現を調べたところ、共に発現量が有意に減少することが明らかとなった。これらの結果から、対象とした免疫関連遺伝子は時計遺伝子によって制御された転写リズムを有することが示唆された。 上記の研究と並行して、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を利用し時計遺伝子:Bmal1 / RORノックアウトメダカの作出を試みた。候補ガイドRNAを作成し受精卵へマイクロインジェクションを行ったのち、発生直後の個体を対象にヘテロ二本鎖移動度分析(HMA)によって変異の有無を確認した。対象遺伝子への変異挿入が確認されたため、バッククロスを進めF2世代(ヘテロ)までの作成を完了した。次年度には、F3ホモ個体を作出できる予定である。
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