研究課題/領域番号 |
20H03077
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
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研究分担者 |
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
安元 加奈未 東京理科大学, 薬学部, 講師 (70412393)
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サンゴ / 石灰化 / 石灰質の底質 / リン酸塩 |
研究実績の概要 |
海水温上昇や海洋酸性化など地球規模のストレスの影響によってサンゴの減少が指摘されていますが、沿岸域の土地利用の変化や諸開発にともなう陸域由来の物質がサンゴの生育環境を悪化させるなど地域に特有な影響も懸念されています。特に過剰な栄養塩が海域に流れ込むと、生きたサンゴの被度が減少したり、白化したサンゴの回復が遅れたりすることが指摘されており、科学的なメカニズム解明が望まれていました。通常、サンゴ礁海域の表層海水の栄養塩濃度は低く、表層海水の栄養塩濃度でサンゴに及ぼす影響を実験的に評価するのは困難でした。他方、本研究グループは、代表的な栄養塩であるリン酸塩が稚サンゴの骨格形成を阻害することを室内実験で見いだしておりました。リン酸塩がサンゴ骨格の素材でもある炭酸カルシウムに対して高い吸着性を持つ点を考慮すると、リン酸塩は炭酸カルシウムで構成される熱帯・亜熱帯の砂に蓄積していることが懸念されていました。沖縄県のミドリイシサンゴが比較的多く生息する沖縄島北部沿岸部、市街地や農地に比較的近い南部沿岸域で採取した石灰質の砂と共に飼育したコユビミドリイシの稚サンゴを約40日間飼育し、稚サンゴの骨格形成の様子と飼育海水に溶出してくるリン酸塩の濃度を調べました。その結果、北部沿岸部で採取した砂と共に飼育した場合、飼育海水には5~8 microMのリン酸塩が溶出し、海水のみで飼育した稚サンゴに比べて、底面骨格は7割程度の減少に収まりました。一方、南部沿岸域で採取した砂と共に飼育した場合、飼育海水には12~20 microMのリン酸塩が溶出し、海水のみで飼育した稚サンゴに比べて、底面骨格は3割程度にまで大きく減少しました。後者の場合、走査型電子顕微鏡(SEM)の写真からも高濃度のリン酸塩を人工的に添加して飼育した稚サンゴの骨格と類似した凹凸のはげしい骨格表面が確認できました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンゴの主な分布域である熱帯・亜熱帯の島嶼域では、多くの砂が石灰質つまり炭酸カルシウムで構成されています。リン酸塩は炭酸カルシウムに高い吸着性を有するため、陸から海に流れ込んできたリン酸塩は沿岸域の砂に徐々に吸着され、高濃度で蓄積されていることが明らかになりました。また、砂に蓄積したリン酸塩は飼育海水中にも溶出するためサンゴなどの底生生物に影響を及ぼしていると考えられます。本研究は、科学的に証明が難しかった栄養塩によるサンゴへの直接的な悪影響の一端を証明できたという点で意義がある研究で、サンゴ礁保全に大きく貢献することが期待できる。 この成果は2021年3月17日に英国王立協会が刊行する “Royal Society Open Science”に発表し、琉球新報、沖縄タイムス、日刊工業新聞社などに掲載された。 シラヒゲウニやシャコ貝などでも予備実験を進めており計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、砂に蓄積したリン酸塩を蓄積型栄養塩と定義し、本格的な調査を始めています。サンゴ礁によって形成された島では、大きな河川が発達していない場合もあります。その場合、陸域からの栄養塩は地下水を経由して沿岸海域に流出します。地下水が何処に海底湧水として海域に流出しているかは探すのが困難ですが、沿岸域の蓄積型栄養塩を調べることによって、陸域負荷の大きい場所を特定することが可能になると考えられます。また現在、サンゴの骨格形成を阻害するリン酸塩だけでなく、底生生物の生育に影響を及ぼす可能性のある陸域由来のその他の物質についても、石灰質の砂に蓄積しているかどうか調査を開始している。
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