研究課題/領域番号 |
20H03077
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
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研究分担者 |
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
安元 加奈未 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (70412393)
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サンゴ / 石灰化 / 石灰質の底質 / リン酸塩 |
研究実績の概要 |
採取した底質を乾燥後に篩分けし、遠沈管で底質 を海水に浸漬し、30℃で72時間浸漬しリン酸塩を溶出させた。遠心後の上清をフィルターで濾過し、モリブデンブルー法でリン酸塩濃度を測定し、蓄積型栄養塩の値とした。得られた海岸毎の蓄積リンの値を平均し、稚サンゴの加入量と相関関係を調べた。高CO2条件での複合ストレス実験は、前述したシャーレをCO2インキュベーター(0.1% CO2)に設置し0.04%のラボ室内で飼育したものと比較し、石灰化影響の定量的評価法を構築した。 コユビミドリイシサンゴ成体および発生初期段階のサンゴ幼生の細菌叢を16S rRNA遺伝子のV1-V2領域を標的としたアンプリコンメタゲノム解析により確認し、研究室内で長期飼育を行った稚ポリプの細菌叢と比較した。コユビミドリイシから単離培養したEndozoicomonas属細菌を用いてプラヌラ幼生、褐虫藻を共生させた稚ポリプおよび非共生の稚ポリプに対して細菌曝露実験を行い、Endozoicomonas属細菌の共生成立メカニズムについて検証した。 FITCラベルしたリン酸塩試薬よる海洋生物の骨格形成にリン酸塩が及ぼす影響の可視 我々が開発したFITC(蛍光標識試薬,Fluoresceinisothiocyanate isomer-I)をラベルしたリン酸塩試薬(FITCAA)を,海水に添加し,サンゴの石灰化部位に到達する時間を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各地域で採取された底質を篩分けし、粒径を揃えた底質を海水に浸漬し、底質に吸着したリン酸塩(蓄積型栄養塩)の測定法の開発を行った。蓄積型栄養塩は月変動が見られるものの表層海水と比較するとより長い期間の陸域負荷を評価することができる。沖縄島南部地域を調査対象地域とし、蓄積型栄養塩の比較と共に、稚サンゴの加入量との関係を検証した。その結果、地下水や河川の影響を受けやすい地点のでは蓄積型栄養塩の値は高く、これらの地点の底質と共に稚サンゴを飼育すると顕著に骨格形成が阻害されることが明らかになった。稚サンゴ加入量とも高い相関があることも分かった。石西礁湖での蓄積型栄養塩の調査からもエビ養殖や畜産の影響を受けている箇所を可視化することに成功した。表層海水のリン酸塩濃度は検出限界外であっても、蓄積型栄養塩を調べることでこれまで見ることが出来なかった陸域負荷の実態把握が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
サンゴなどは石灰化部位 のpHを上昇させてCaCO3形成を行うが,これらの海洋生物が行う局所的なpH上昇の詳細な機構は明らかにされていない。我々はこの石灰化に伴うpH昇に生体内に豊富に存在する塩基性物質であるポリアミンが寄与すると考えている。海水にはCaの3倍量のMgが含まれており、pHが上昇するとMg(OH)2が析出しCaCO3沈殿は阻害される。このMgによる阻害はこれまで十分に検討されてきていなかった。本年度は海水のpHを上昇させたときのCaCO3反応を海水とポリアミンをもちいた石灰化反応を用いて検証し、新たな石灰化モデルの構築に繋げる。
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