今後の研究の推進方策 |
これまでに、DHAがPKCθとRACK1の相互作用を抑制すること、メラノーマ細胞株においてPKCθ発現とDHAによるJNKリン酸化抑制に相関があることを見出した。これらの結果は、メラノーマ細胞においてDHAがPKCθシグナル伝達抑制に働き、がん細胞増殖を抑制することを示唆している。PKCθはT細胞において、細胞分化・増殖および免疫シナプス形成に必須の分子であることから、本年度はT細胞およびT細胞性白血病細胞株を対象として、T細胞増殖、腫瘍細胞増殖、免疫シナプス形成に対するDHAの作用を検討する。また、DHA欠乏培地でのT細胞株培養方法を検討し、DHA欠乏がT細胞に及ぼす影響についても検討する。 腫瘍細胞増殖はJurkatやMOLT-4Fなど複数のヒトT細胞性白血病細胞株を用いて、DHA添加による細胞増殖抑制作用を解析する。T細胞増殖では、マウスT細胞をCD3抗体およびCD28抗体で刺激した際に誘導される細胞増殖に対するDHAの作用を解析する。免疫シナプス形成に対する作用解析では、Jurkat細胞をCD3およびCD28で刺激した際に活性化されるシグナル伝達経路および遺伝子発現のDHAによる変化を解析する。DHA欠乏培地調製は、通常用いるウシ胎児血清の代わりに、脱脂ウシ血清に大豆油および大豆レシチンを添加した培地を検討する。 DHAのRACK1を介したSrc, AChE-R, NR2B, Gβへの作用については、蛋白質相互作用およびシグナル伝達へのDHAの作用について引き続き検討する。また、Src, AChE-R, NR2B, Gβを介したシグナル伝達経路のなかでDHAによる作用が観察された経路に関しては、T細胞株培養で確立したDHA欠乏培地での細胞培養方法を活用して、DHA欠乏による影響について解析する。
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