研究課題/領域番号 |
20H03086
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
佐藤 和憲 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (80355601)
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研究分担者 |
今井 麻子 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (00825242)
渋谷 往男 (澁谷往男) 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20557079)
大江 靖雄 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (60302535)
半杭 真一 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (90504043)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農業法人 / 経営戦略 / 多角化 / 地産地消 |
研究実績の概要 |
農水省の六次産業化・地産地消事業の総合化事業計画認定対象企業を対象とし、民間企業データベースから109社を抽出して、このデータを企業属性、財務指標、既存事業(売上高1位~第3位)、多角化事業(売上高1位~第3位)、親会社、関連会社、農商工連携等について分析した。対象法人の既存事業(売上高1位)は、米作(6社)、露地野菜(16社)、果樹(6社)、施設野菜(含むキノコ)(16社)、肉用牛(12社)、養豚(10社)、養鶏(11社)であった。 予備的な分析の結果、既存事業によって多角化事業には特徴はあるものの、全体的に売上高1位の多角化事業は、売上高1位の既存事業の製品を用いた簡易な加工業またはその卸売・小売業が多くを占める傾向が見られた。そこで、既存事業の売上高1位、2位、3位と多角化事業の売上高1位、2位、3位のクロス表を作成しカイ二乗検定を行った。 その結果、売上高1位の既存事業と売上高1位の多角化事業の間に統計的に有意な関係が認められた。この各企業における売上高1位の既存事業と売上高1位の多角化事業の関係をアンゾフの戦略類型(成長ベクトル)に当てはめると、大半は垂直的多角化で、水平的多角化に位置付けられるのはごく一部であった。また、本格的な多角化ともいえる斜行的多角化や集成的多角化がごく少ない点も確認できた。 なお、2020年度中に実施できなかった農業法人に対するアンケート調査は、2021年前期(8~9月)に全国の3,600社に配布し、1,356社から回答を得た。現在、アンケートデータについて新型コロナ肺炎流行の影響に焦点を当てて分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、農業法人へ面接による予備調査の実施し、この結果に基づいて課題Ⅱ、Ⅲ、Ⅴに共通したデータとなるアンケート調査票を策定して実施する予定であった。しかし、新型コロナ肺炎流行により、現地での予備調査が困難となったため、民間の企業データベースを利用して予備調査の一部に代替するとともに、農業法人に関する先行研究で用いられた調査項目をベースとして調査票案を策定した。この間、度重なる計画変更によって、2020年度中にはアンケート調査を実施できなかった。また、消費者向けアンケートについても、同様な理由で実施できなかった。このため、2020年度予算のうちアンケート調査所要額を2021年度に繰り越して実施することとした。以上の理由から、2020年度から実施予定であった課題Ⅰ、課題Ⅱ、課題Ⅲについては、アンケート調査データに基づいた分析ができず、当初の計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
課題Ⅰでは、2020年度計画を完了すべく、加工・業務需要に焦点を当てたアンケート調査を実施して研究を進める。その際、製造小売店や飲食店といった消費者需要にも配慮する。 課題Ⅱと課題Ⅲでは、2020年度中に作成したアンケート調査票案を、過去のアンケートに基づいた研究成果を考慮しながら、近年における非農業からの農業参入の拡大、海外展開の進展、農業法人間での出資、グループ経営としての多角化、アライアンスによる多角化なども把握できるよう工夫してブラッシュアップして実施する。得られたアンケートデータの分析については、当面、農業法人が新型コロナ肺炎流行から受けている影響と対策などについて「レジリアンス(回復力)としての多角化」という視点から検討する。 課題Ⅳでは、当初計画通り農業法人と地域経済の関係に関するDID分析、および地域産業連関分析を行う。ただし、地域産業連関分析については、分析対象を1~2地区とし、課題Ⅱ、Ⅲ、Ⅴの担当者と相談しながら選定する。 課題Ⅴでは、2020年度に課題Ⅰ・Ⅱで取得した民間の企業データベースのデータを加工して、統計的検定、回帰分析、データ包絡分析等の計量分析により、農業法人の多角化活動のタイプと経営的要因との関連性および経営効率の相違について解析する。
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