研究課題/領域番号 |
20H03096
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
窪田 恵一 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50707510)
|
研究分担者 |
見島 伊織 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (00411231)
渡邉 智秀 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (60251120)
珠坪 一晃 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 副研究センター長 (80293257)
松浦 哲久 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (90771585)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 堆積物微生物燃料電池 / 底質改善 / 微小電極 / 放射光分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、堆積物微生物燃料電池(SMFC)適用による底質内部のリンや鉄が受ける影響について調査し、底質改善メカニズムについて検討を行った。実験は、ラボスケールサイズの堆積物微生物燃料電池を作製し、主として(1)微小電極を用いた底質表層付近のリン酸濃度の変化の把握、(2)底質内鉄の放射光分析による形態変化の把握を行った。(1)微小電極によるリン酸濃度の測定は、環境サンプルに対して適用の報告がされていなかったが、本研究により底質表層のリン酸濃度の分布の測定に成功した。SMFC非適用の底質では、底質と直上水との界面でリン酸濃度が高かった。一方でSMFC適用系では底質と直上水の界面付近でのリン酸濃度が低く、栄養塩溶出抑制への寄与が示唆された。また、底質表面から深さ30 mm程度まではSMFC適用系で非適用系よりもリン酸濃度の低下が観察され底質の広い範囲に影響が及んでいた。 (2)底質内鉄の形態変化は、FeのK吸収端のXANES領域の評価により行った。測定は、エネルギー加速器研究機構 フォトンファクトリーのBL-12Cにより行った。底質のサンプル調整による鉄形態の変化を避けるため、7素子シリコンドリフト検出器(SDD)を用いた蛍光法にて湿潤状態の底質を直接測定した。SMFCを適用することによってFe K吸収端のピークがやや高エネルギー側にシフトしていることが明らかとなり、酸化的な形態へと変化している可能性が示唆された。また、標準物質とのフィッティングでは、電極極近傍の底底質では、鉄とリンが結合している可能性が示唆されたが、フィッティングに用いた標準試料が少なく、さらなる解析が必要であると考えられた。一方で底質表層では、鉄とリンの結合は見られず、リン酸測定の結果を踏まえると底質内部と底質表層では異なるメカニズムでリン酸濃度の低減が生じている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定であったSMFC適用によるリン酸イオンの動態の解析と鉄形態の解析について予定通り実施を行うことが可能であった。得られた結果からSMFCを適用することで底質界面のリン酸濃度が大幅に低減されることや、鉄と直接結合によるものではない可能性など、栄養塩溶出抑制に関する知見を得ることが可能であった。一方でコロナ禍の影響で研究計画に遅れが一時的に出た都合により、データ解析や考察にやや不十分な点がありさらなる検討が必要であるが、概ね予定通りに進んでいると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
実用化やスケールアップ化に関する知見収集を目的として底質性状の違いによる底質改善および栄養塩溶出への影響を評価する。また、底質中の微生物について菌相解析を進めSMFCに寄与する微生物群の同定を進め底質改善との関連性を評価する。このほか鉄の形態解析について,標準物質の拡充なども進めより詳細な鉄形態への変化を評価する。
|