研究課題/領域番号 |
20H03102
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 範之 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00314972)
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研究分担者 |
泉 智揮 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (40574372)
熊野 直子 愛媛大学, 農学研究科, 講師 (70711638)
武山 絵美 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90363259)
木全 卓 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60254439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ため池群 / 最適化 / 利水機能 / 防災機能 / 水利ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は,ため池の多面的機能の中の「利水機能」と「防災機能」を適切に発揮させるため,受益環境の変化と集水域の土砂災害の危険度および費用便益を考慮した「ため池群と用排水路網を含む水利ネットワーク」最適化システムの開発を主目的としている.また,頻発する自然災害やため池の老朽化と管理者不足が問題となる近年,「ため池群と用排水路網を含む水利ネットワーク」最適化システムの確立は喫緊に要請されている社会的課題であり,本研究はその社会的要求に応えようとするものである.本研究を完成させ,全国のため池の維持管理の足掛かりとなることも目的である. 本研究は,STEP1 ため池諸元の現地調査と地形および水利慣行・土地利用調査,STEP2 集水域と表層および深層崩壊の発生する谷部の抽出,STEP3 水利ネットワークの設定,STEP4 土石流を含む洪水流出モデルの作成,STEP5 水利ネットワーク再編整備の評価指標および最適化パラメータの設定,STEP6「ため池群と用排水路網を含む水利ネットワーク再編整備」最適化システムの開発 の6つのステップで進められるが,本年度はSTEP1, 2を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度から平成26年度にかけてため池一斉点検が実施され,(1)ため池の構造(堤体の土質,堤体の高さ幅などの諸元,堤体の老朽度,洪水吐及び緊急放流施設の有無,底樋の築造年代や構造など),(2)周辺環境(ため池の流域の広さ,ため池の流域の崩落履歴,接続道路の位置など),(3)下流状況(住宅,公共施設,国・県・市道,農業用施設など),(4)ため池の利用状況(受益面積,用水依存度),(5)立地条件(地震区分(強震帯,中弱震帯),ため池の連なりの有無,貯水量),(6)その他基本状況(既往日最大雨量・時間雨量,最大震度など)といった項目が整理されている.また,平成30年7月の西日本豪雨を受け,農林水産省は全国の都道府県に対し,下流の民家や学校,病院に被害を与える可能性のある全てのため池の緊急点検を要請したところである.こうした自治体が持つ「ため池諸元」のデータを収集するとともに,特に,大日川ダム(兵庫県南あわじ市)下流に立地する 7集落(水利組織A~G)のため池群を対象に詳細な調査を実施した.各ため池の取水源と排水先に着目し,ため池群を構成する各ため池を独自の手法で類型化した結果,その立地特性および管理実態を明らかにすることができた.今後のため池群の保全は,利水では,集水型・独立型の組織的管理の支援,集水型の獣害対策の強化が必要であると考えられる.治水では,利用型・独立型の堤体や洪水吐の強化,独立型の利水・治水両立のための補給水確保が必要であると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
20202年9月までに、事前準備およびため池群予備調査を行い、2021年3月までに,ため池群本調査および調査結果のとりまとめ、GISによるデータ解析を行う予定であったが,例年になく台風の上陸がなかったため,予定していた諸調査が実施できなかった.次年度は,以上の調査を実施する.また,2020年度に実施した「STEP1 ため池諸元の現地調査と地形および水利慣行・土地利用調査」および「STEP2 集水域と表層および深層崩壊の発生する谷部の抽出」を継続して実施し,「STEP3 水利ネットワークの設定」を新たに実施する.
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