本研究の目的は、PIVシステムを活用し流体を可視化することによる排水管閉塞メカニズムの推定と近赤外分析を用いた排水中の脂肪酸濃度のリアルタイム測定の検討にある。 まず、排水管内に流し続けることで閉塞原因物質が堆積する模擬排水の成分を検討した。「カルシウムイオン、オレイン酸、フロリジル(浮遊物質)が含まれる模擬排水」、「閉塞原因物質の堆積が見られない水道水、カルシウムイオン、フロリジルで作成したの模擬排水」を用意し、排水が流れる様子をPIVシステムで解析することで比較を行った。その結果、フロリジルが含まれる排水は流速が低下した。さらに、カルシウムイオンとオレイン酸によって発生した油脂固形物とフロリジルが合わさることで排水管内に堆積物を形成することを明らかにした。また、排水管内に閉塞原因物質が一旦堆積すると、同じ流速の排水を流しても堆積が解消されないことを明らかにした。 つぎに、赤外分析計(NIRFlex N-500、Buchi製)を用いて、近赤外分析による油分濃度測定のための検量線の作成を行った。遠沈管に蒸留水とオレイン酸を加えることで作成したサンプルとそのサンプルの油分濃度を解析した。つぎに、作成した63サンプルのオレイン酸濃度とサンプルを近赤外分析計で解析し検量線を作成した。作成された検量線の回帰式の決定係数R2は0.9901であり、近赤外分析計によるオレイン酸濃度の測定の可能性を示した。一方で、フロリジルが模擬排水に含まれると吸光度が低下し、正確なオレイン酸濃度が困難であることを明らかにした。 さらに、近赤外カメラにバンドパスフィルター(940 nm)を装着し、940nm光源を用いて、模擬排水管の中のオレイン酸を測定した。その結果、モノクロ画像からオレイン酸の有無が鮮明に判別できることが確認できたことから、排水中の脂肪酸濃度のリアルタイム測定の可能性を示した。
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